資材置き場の主



 南但馬自然学校からすぐ近くの田んぼや畑が広がる一画に、土木工事の材料などを集めた資材置き場があります。この場所を通りかかるたびに毎回のように目にするのが、上の写真にあるオスのイソヒヨドリです。
 しばらく見ていると、5分経っても10分経っても、一箇所(いっかしょ)にとまって辺りを見回しているだけで、特に何をするわけでもありません。近くの畑で農作業をする人や、農道を走る自動車にも動じることなく、「我関(われかん)せず」といった様子です。
 ではいったいここで何をしているのでしょう? 資材置き場がイソヒヨドリのお城で、「ここはオレのものだ!」とでも言いたげに見張りをしているのでしょうか。そう考えると背筋をピンと伸(の)ばしたイソヒヨドリが、凛々(りり)しい戦国武将のように見えてくるので不思議です。

 オスのイソヒヨドリが陣取(じんど)る資材置き場から、100メートルほど離(はな)れた資材置き場にも別のイソヒヨドリが居座っています。
 大きなゴムチューブの上にちょこんととまるのは、お腹のウロコ模様が目立つシックなメスのイソヒヨドリです。身体の色はオスと随分(ずいぶん)違(ちが)いますが、メスのイソヒヨドリも、オス同様にゴムチューブから動こうとはしません。その姿はやはり見張りをしているように思えます。それにしても、イソヒヨドリたちは雑然とした資材置き場がお気に入りのようです。

 再びオスのところへ戻(もど)ってみました。するといつもとまっている鉄管に姿がありません。ふと下を見ると地面で餌(えさ)を探していました。さすがの戦国武将も空腹には勝てなかったようですね。

 イソヒヨドリはその名前が示すように、本来、海岸などで生活する野鳥で、本校の周辺では全く見かけることはありませんでした。それがここ十数年でどんどん内陸部に進出し、今では一年を通して見られる大変身近な野鳥となりました。
 春になると、南但馬自然学校にもイソヒヨドリ

               大屋根広場の煙突でさえずるイソヒヨドリ

がやってきます。大屋根広場の煙突(えんとつ)からうつくしいさえずりが聞こえてくるその日が待ち遠しいものです。

文責 増田 克也

“自然のページ”のご意見ご感想をメールでお寄せください
Email mtajimashizen@pref.hyogo.lg.jp