精を出すチョウゲンボウ



 秋が深まるにつれて、広い田んぼなどでチョウゲンボウの姿を見かけるようになりました。チョウゲンボウはハトより少し大きい程度の野鳥で、その愛嬌(あいきょう)がある表情とは裏腹に、小鳥、ネズミ、昆虫(こんちゅう)などの小動物を狩(か)るタカの仲間です。

 高い電柱のてっぺんなど見通しがいい場所で、にらみを利かせて獲物(えもの)を探す姿はさすがにタカらしく、辺りの空気にはピーンと張りつめたような緊張(きんちょう)が漂(ただよ)います。
 しばらく見ているとリラックスして全身の羽をふくらませると、脚(あし)の爪(つめ)を器用に使い顔を掻(か)きはじめました。よほど気持ちがよいのでしょう、目を閉じ口は半開きでうっとりとした表情です。仕上げは体操競技でもするように、羽と脚を水平にぐーんと突き出す“伸(の)びのポーズ”を見せました。しかし、くつろいでる時も見張りは怠(おこた)りません。伸びをしていたかと思うと、サッと体勢を入れ替(か)えて一気に飛び出していきました

 時折、羽の先を震(ふる)わせるような細かい羽ばたきを交えながら、一直線に滑空(かっくう)して行った先は田んぼの真ん中です。遠くから見ていると、羽を大きくばたつかせて、脚で何かを押さえつけている様子です。「獲物を捕(と)らえたか!?」と思いきや、じっと前方を見つめたまま置物のように動かなくなってしまいました。どうやら今回の狩りは失敗に終わったようです。
 しかし、そんなことにめげるチョウゲンボウではありません。再び電柱に上がると、獲物めがけてまっしぐら! これを何度も繰り返し、一日中狩りに精を出します。

 チョウゲンボウが狩り場にしている田んぼの畦(あぜ)には、「もう行ってしまった」と思っていたノビタキが草にとまり、南へ渡るそのときを図っているようでした。

文責 増田 克也

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