秋告鳥



 毎年、9月も終わりに近づくとノビタキという野鳥が気になりはじめます。ノビタキは、春から夏にかけて、主に本州中部以北から北海道で繁殖(はんしょく)をします。そして秋が近づくと、越冬地(えっとうち)の東南アジアなどを目指して南下をはじめ、南但馬自然学校がある近畿地方(きんきちほう)を通過していきます。つまり、ノビタキは当地に秋を告げる野鳥なのです。

 この秋、ノビタキと最初に出会ったのは薄暗(うすぐら)い雨の朝でした。毎年、ノビタキが訪れる休耕田に向かうと、早速、それらしきシルエットを見つけました。急いで望遠鏡をのぞくと・・・う〜ん残念、これは年中見られるカワラヒワです。
 その後、待つこと約1時間、遠くセイタカアワダチソウにスズメのような小鳥がとまりました。これこそノビタキに間違いありません。春に北の繁殖地へ向かう彼らを見送ってから、半年ぶりの再会です。
 休耕田のノビタキはセイタカアワダチソウのてっぺんにとまり、虫などの餌(えさ)を見つけると低く構えた体勢から一気に飛び出していきます。この動作を何度も繰(く)り返し、雨の中でも餌捕(えさとり)りに精を出していました。

 次の日、天気は回復し、あちらこちらでノビタキに出会うことができました。黄金色に色づいた稲穂(いなほ)の海を漂(ただよ)うかのように揺(ゆれ)れるノビタキ。畑の周りに張られた網(あみ)で休むノビタキ。中でも、この辺りの特産物、黒大豆の葉にとまる姿は、作付面積が増えるにしたがってすっかり定着した秋の光景となりました。

 南下していくノビタキの姿がなくなると、南但馬地方の秋はぐっと深まります。次に、彼らに会えるのは、来春の桜が咲く頃(ころ)になるでしょう。

文責 増田 克也

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