これは騒音か音楽か?



 
 近ごろ、川岸を通りかかると「ギシギシ、ゲシゲシ」と、やたらに騒(さわ)がしい鳴き声がひっきりなしに聞こえてきます。これは、南の国から渡ってくるオオヨシキリという野鳥が、自分の縄張(なわば)りを示す鳴き声です。この声は、鳴き声というより騒音(そうおん)に近く、そばで聞くと思わず両手で耳をふさぎたくなるほどの大声です。
 しかし、ものは考えようです。この悪声も、「往年の歌手が、(しぶ)くしわがれた声でジャズを歌っている」と思えば楽しくなるので不思議です。それでは、ともかくオオヨシキリの声を聞いてください。

 いかがでしたか?「あぁ〜この声なら聞いたことがあるぞ」と思われた方もあることでしょう。みなさんは渋いジャズに聞こえましたか。それともただの騒音でしょうか。このさえずりは縄張りを示す他に、オスがメスにアピールするためのラブソングだと言われているので、多少耳障りでも、やっぱりジャズと解釈(かいしゃく)した方がいいのでしょう。
 当のオオヨシキリはジャズだろうが騒音だろうが、そんな人間の勝手な言い分など全くおかまいなしに、大きな赤い口を開けて来る日も来る日もさえずります。中には、少しでも遠くまで届けとばかりに、高い電柱の支線によじ登るものまでいます。

 さあ、みなさんもオオヨシキリに会いに行ってみませんか。ヨシなどが茂(しげ)る川に出向くと、遠くからジャズが聞こえてくるはずです。もしも声がしない場合は、いつもオオヨシキリが歌うステージの近くで待ってみてください。ステージの場所を探すのは簡単ですよ。川岸に生えるヤナギの葉などに白い糞(ふん)がたくさん付いているところがオオヨシキリのステージです。

文責 増田 克也


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