季節を運ぶ小鳥



 春爛漫(はるらんまん)。桜がピンク色の花を開いても、畑一面に菜の花が広がっても、何かものたりない。「やっぱりあの鳥が来ないと春を実感しないなぁ・・・」野鳥を見て楽しんでいる“バードウォッチャー”と呼ばれる人たちが心待ちにしているのがこのノビタキです。
 ノビタキは春に東南アジアなどから、南但馬自然学校がある近畿(きんき)地方を通過し、本州中部より北の繁殖地(はんしょくち)を目指して旅をする渡り鳥です。

 田んぼなどでノビタキを探すと、羽の色や模様が異なる、様々なタイプを見ることができます。黒いタキシードを着たような模様は、夏羽のオスです。全体に淡(あわ)い色合いのものはメス。そして、目の上に白い眉毛(まゆげ)のような模様があるのは、夏羽に着替える最中のオスです。
 ノビタキを漢字では「野鶲」と書き、文字が表すように、野原や田んぼ、河川敷(かせんじき)といった開けた環境(かんきょう)を好みます。辺りの見通しがきく、木の枝や草の茎(くき)にとまり、エサの虫を見つけると勢いよく飛び出しては空中で捕(と)らえます

               飛びながら虫を追いかけるメスのノビタキ

が、時には地面をはう毛虫なども食べることもあります。

 この春、南但馬自然学校の周辺で、初めてノビタキを見かけたのは4月5日でした。その後、日を重ねるごとに2羽3羽と数を増やし、4月中旬(ちゅうじゅん)には最多の6羽を数え、そして今ではほとんど見かけなくなりました。
 今度、ノビタキが訪れるのは、越冬地(えっとうち)を目指して南下する9月下旬になります。そのときには、この春に生まれる若鳥もいっしょに秋を運んできてくれることでしょう。

文責 増田 克也


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