夢と希望のシンボル塔


  連なる山々がうっすらと雪化粧(ゆきげしょう)をした3月26日、 のどかな田園風景が広がる南但馬自然学校近くの、朝来市山東町三保にコウノトリの人工巣塔(じんこうすとう)が建てられました。 人工巣塔が、野生復帰に向けて試験放鳥がすすめられている豊岡市以外に建てられるのは今回が初めてのことです。

 巣塔が建てられた三保区では、1996年より“アイガモ農法”で米作りを行い、2007年からは“コウノトリ育む農法”を取り入れるなど、農薬の使用を抑(おさ)えた環境(かんきょう)にやさしい農業に取り組まれており、本校で自然学校を実施中(じっしちゅう)の子どもたちが見学に伺(うかが)うこともあります。

 作業は巣塔の先端(せんたん)に、直径1.6メートルもある巣台(すだい)を取り付けるところから始まりました。この巣台は、先日、三保区のみなさんや地元の子どもたちが、木の枝や稲藁(いなわら)を敷(し)いて作ったものです。
 次に、関係者や地元のみなさんが見守る中、大きなドリルで農道脇(のうどうわき)に掘(ほ)られた穴に、クレーン車でつり上げられた、高さ15メートルの巣塔が、ゆっくりと設置されました

 記念式典の終了後、記者のインタビューに三保区区長の岡林史郎さんは、「巣塔は建ったが、コウノトリが暮らせる環境はまだまだだ。まずは環境作りから取り組みたい。」と力強く応え、その目はすでに未来を展望されているようでした。

 その昔、南但馬自然学校の周辺にもコウノトリが棲(す)んでいたと、地区のお年寄りから聞いたことがあります。「幸せを運ぶと言われるコウノトリが大きな翼(つばさ)を広げ、再び南但馬の空を舞(ま)う日がきてほしい。」今回、三保区に建てられた巣塔は、人々のそんな夢や希望を担(にな)うシンボル塔のようにも思えます。

文責 増田 克也


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