ミスミソウを訪ねて


  先週の前半はすっかり春らしくなり、18日には但馬北部の豊岡市で最高気温が25.7℃の夏日になるなど、日中はストーブも上着も必要がない暖かい日が続きました。 この陽気に田んぼの畦(あぜ)にはツクシが顔を出し、朝来山のふもとでは サンシュユが黄色いつぼみを開き始めました。

 これだけ暖かくなると朝来山のミスミソウが気になり始めます。例年、本格的な開花は4月に入ってからですが、 このところの好天で季節はずいぶん進んでいるはずです。そこで、ミスミソウの様子をうかがいに朝来山へ行ってみました。

 南但馬自然学校を出発して、つづら折りの山道を登っていきます。途中(とちゅう)、視界が開けた場所で一休みして 竹田城跡(たけだじょうせき)を望むと、黄砂でぼんやりかすんでいました。
 およそ1時間かかって、毎年ミスミソウが咲(さ)く斜面(しゃめん)へたどり着き、 早速、地面を丹念(たんねん)に探しますが、ミスミソウはなかなか見つかりません。やはり、時季が早すぎたのでしょうか。
 腰(こし)を落とし、落ち葉をかいて辺りを探すこと十数分、ようやくミスミソウの名前の由来になった、 3つの角を持った葉を見つけましたが花はありませんでした。 そっと葉をめくり上げると、そこには、開くときをじっと待っているかように、まだ固く閉じた つぼみが隠(かく)れていました
 つぼみの発見に気をよくして、斜面の上の方も探すと、葉の陰(かげ)から 頭をもたげたばかりのつぼみが・・・。さらには、今朝から開き始めたのでしょうか、 花心を遠慮(えんりょ)がちにのぞかせたものもありました。しかし、花が開いた株は、これ1つだけで最盛期はまだ先のようです。

 黄砂に煙(けむ)る南但馬自然学校

          画面の下に見える大きな瓦屋根が南但馬自然学校です

を眼下に望みながら帰路に着くと、尾根に横たわる朽(く)ちた倒木(とうぼく)には、 大きく羽が傷ついたヒオドシチョウが柔(やわ)らかな春の陽に、冬越(ふゆご)しした体を温めています。
 途中でにわか雨に何度も見舞(みま)われながら下山をすると、雨粒(あまつぶ)と一緒(いっしょ)に落ちてきた黄砂が、車のボンネットに点々と 黄土色の跡(あと)を残していました。

文責 増田 克也


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