旅立ちの日まで



 1月の中頃(なかごろ)から、南但馬自然学校に青色のルリビタキが姿を見せるようになりました。ルリビタキは主に本州中部より北の高い山で繁殖(はんしょく)し、冬に南の地方へ移動する習性があります。ですから、兵庫県にある、ここ南但馬自然学校では冬にだけ見られる野鳥です。

 ルリビタキの名前にある“ルリ”は、青い羽の「瑠璃色(るりいろ)」を指しています。ところが、瑠璃色のルリビタキにはそう簡単に出会うことができません。その辺りで目にするルリビタキのほとんどが、オリーブ色のものばかりです。
 これには訳があります。美しい瑠璃色の羽は、3歳(さい)以上の成熟したオスだけのトレードマークで、若いオスやメスは体の大部分が地味なオリーブ色をしています。短い小鳥の寿命(じゅみょう)を考えると、瑠璃色のルリビタキが少ないのもうなずけます。

 南但馬自然学校で瑠璃色のルリビタキが観察できたのは、実に4年ぶりのことです。生活棟へ続く長い石段を上がる途中(とちゅう)で「ガッガッ、ガッガッ、グエッグエッ」とカエルのような声が聞こえたら、その場で立ち止まり、そっと声のする方向を探してください。
 ほら、いましたいました。低い植え込みの中で青い体が見え隠(かく)れしています。次にパッと飛び出し、植木の支柱にとまると地面に目を凝(こ)らし虫を探し始めました。 その後、素早く地面へ降り立ちましたが、どうやら虫を見失ったようです。体の割にずいぶん細い足で踏ん張り、背伸びをしながら悔(くや)しそうに遠くを見つめていました。しかし、いつまでも悔やんではいられません。気を取り直したように勢いよくホッピングすると、別の支柱に飛び上がり再びエサを探し始めました

 ルリビタキは、エサが乏(とぼ)しくなる冬季に縄張(なわば)りを作ります。南但馬自然学校の建物がある範囲には2つの縄張りがあり、東側はオリーブ色のルリビタキが、 そして今回紹介した青いルリビタキは西側の半分を縄張りにしています。北へ旅立つ日が来るまで、その美しい姿で愛嬌(あいきょう)を振(ふ)りまいてほしいものです。

文責 増田 克也

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