イタチ 08.12.16




円山川にたたずめば



 ある日の早朝、円山川に足を向けると、あたり一面は白い霧(きり)に包まれていました。遠い川面には十数羽のコガモが静かに浮(う)かんでいます。幾分(いくぶん)、霧が薄(うす)くなると、突然(とつぜん)、コガモたちが水面すれすれに上流へ飛び立ち、これを合図にしたかのように生き物たちが活動を始めました。それではこの朝、出会った川辺の生き物を紹介(しょうかい)しましょう。

 まず姿を現したのはアオジです。スズメのような模様ですが、全身に黄色味がかっているのが特徴(とくちょう)です。少し眠(ねむ)そうな目をしていましたが、こちらに気付くとすぐに飛んでいってしまいました

 「チャッ、チャッ、チャチャッ」、アオジが姿を見せる前から、茂(しげ)みの中を鳴きながら行ったり来たり。忍者(にんじゃ)ように潜(ひそ)んでいたウグイスがようやく茂みから出てきました。ウグイスは春から夏にかけて鳴き声をよく聞くため、冬にはいない渡り鳥だと思われている方もあるようですが、一年中見られる身近な野鳥です。

 羽に白いポイントがよく目立つオスのジョウビタキの登場です。ジョウビタキは川原や畑など開けた場所を好む上、あまり人を恐(おそ)れないので観察するには絶好の野鳥です。オスが飛び去ると次にメス がやって来て、腰(こし)をかがめては地面のエサを探し始めました。オスに比べてシックな装(よそお)いで、羽の白も控(ひか)え目です。

 「フィフィ」と柔(やわ)らかな鳴き声で、すぐ近くにいることがわかっていても薮(やぶ)の中から出てこないベニマシコが、枝葉の間を縫(ぬ)って何とか見通せる位置で草の芽をついばみ始めました。
 ベニマシコの名前にある“ベニ”は成熟したオスの羽色を表現した「紅色」のベニです。今回、姿を見せたのは褐色(かっしょく)のメスで、こちらを気にしながらも、食べかすをくちばしにいっぱい付けて草の芽をほおばっていました。

 「な、なんだ?この音は?」と言いたげに、カメラのシャッター音につられて草むらからピョコッと顔を出したのはイタチでした。暫(しばら)く動かずにいましたが「いったいこの人間は何をしてるんだ?」ついには好奇心(こうきしん)いっぱいの表情で立ち上がりこちらをじっと観察し始めました。
 西日本には、在来種のニホンイタチと移入種のチョウセンイタチの2種が棲(す)んでいます。シャッターを切りながら、どちらのイタチか考えていましたが、小さな前脚(まえあし)をちょこんと行儀(ぎょうぎ)よくそろえた愛らしい立ち姿と彼の探求心に思わず笑みがこぼれてしまいました。

文責 増田 克也


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