ノスリ 08.12.02




冬空に白い翼



 冬になると、ノスリというタカの仲間が渡(わた)ってきます。ノスリは本州中部より北の地方では一年を通して見られますが、南但馬自然学校付近では、ひと冬に2、3度しか出会うことがない珍(めずら)しい渡り鳥です。
 大きさはカラス程度でずんぐりした体型が穏(おだ)やかな雰囲気(ふんいき)を作り出しています。羽の表面の色は茶色で、うっかりするとトビに間違えそうになりますが、一度飛び立つと翼(つばさ)の内側の白い色がよく目立ち、高い空を舞(ま)う豆粒(まめつぶ)ほどの大きさでもすぐにノスリだとわります。

 先日、枝にとまるノスリを観察していると、じっと一点を見つめていたノスリが、急にバリ舞踊(ぶよう)のダンサーのように首を前後左右に動かし始めたかと思うと、一気に枝を蹴(け)り飛び出しました。一直線に降りた先は、15メートルほど先の地面です。バンザイをするように翼を上げてバランスをとりながら、何度か足踏(あしぶ)みを繰(く)り返し見事にネズミを捕(とらえ)らえました。その後、ゆっくりと獲物(えもの)を引き裂(さ)いて食べるのかと思いきや、ゴクリと丸呑(まるの)みし、何事もなかったように飛び立っていきました。わずか30秒ほどの出来事に、呆気(あっけ)にとられてしまいました。

 青空を舞うノスリは、いつ見ても清々(すがすが)しいものです。この日、空飛ぶノスリにカメラを向けると、レンズ越(ご)しに目が合い、心の底まで見透(みすか)かされそうな視線に「ドキッ」とさせられました。「次はいつ会えるのだろう」冬空高く弧(こ)を描(えが)き小さくなっていくノスリを見送りながらひとりつぶやきました。

文責 増田 克也


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