ホシハジロ 08.11.18




潜水名人ホシハジロ



 南但馬自然学校から近い、竹田地区の円山川(まるやまがわ)では、寒くなるにつれてカモの数が少しずつ増えてきました。しかし、そのほとんどがカルガモマガモで、いつもの代わり映えのしないメンバーばかりです。

 そんな11月上旬(じょうじゅん)のこと、カルガモの群れの中に見慣れない1羽のカモが混じっているのを見つけました。体はカルガモより小さく、灰色の胴体(どうたい)に赤茶色の首と頭、そして胸と尾羽は黒色をしています。本校の周辺でこんなカモを見るのは初めてです。それもそのはず、このカモは「海ガモ」と呼ばれる、主に河口や海で生活をする“ホシハジロ”です。

 しばらくすると、ホシハジロはカルガモの群れから離(はな)れ、潜水(せんすい)をしてエサを採り始めました。他のカモたちは、上半身を水中に突(つ)っ込み、くちばしが届く範囲(はんい)でエサを採るのがせいぜいですが、ホシハジロはさすがに海ガモだけあって、尾羽まで完全に潜(もぐ)りエサを採ることができます。5、6秒後、川底から水草をくわえて上がり、水面ですすぐような仕草を見せたかと思うと、あっと言う間に食べてしまいました。

 次に浅瀬(あさせ)に上がり水草を食べ始めましたが、先ほどダイビングで見せた華麗(かれい)な姿はどこへやら、首を“への字”に曲げて大変苦しそうにしています。
 この窮屈(きゅうくつ)なポーズには理由があります。ホシハジロのように潜水をしてエサを採るカモは、足を水中で潜水艦(せんすいかん)のスクリューのように使うため、足の位置が他のカモと比べて胴体の後ろよりに付いています。そのため、陸に上がると胴体が縦に伸び上がった姿勢になり、あれほど首を“への字”に曲げないとくちばしが下まで届かないという訳です。

 円山川の上流へやってきたこのホシハジロ。さあ、これから海へ向かうのでしょうか、それとも春までここで過ごすのでしょうか。この冬、“潜水名人ホシハジロ”から目が離せません。

文責 増田 克也

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