ヒイラギ 08.10.28




他人のそら似



 香り高いキンモクセイの花が終わると、自然観察館裏の雑木林では、ヒイラギが小さな白い花をひっそりと咲かせました。花の香りは、キンモクセイに似ていますが、控(ひか)え目で大変、穏(おだ)やかなものです。清楚(せいそ)な花と対照的なのは、鋭(するど)いトゲを持つ葉っぱです。このトゲに少しでも触(ふ)れようものなら、跳(と)び上がるほどの痛みを感じます。

 高さ2メートルほどのヒイラギの木を、上から下までよく観察すると面白いことに気付きました。これまでヒイラギの葉っぱには、トゲがあるものと思いこんでいましたが、木の低いところでは、イメージどおりのトゲが突き出た葉っぱが多く、逆に高いところではトゲが少なくなり、中には「これがヒイラギの葉っぱ!?」と首を傾(かし)げてしまうほど、全くトゲがない丸い葉っぱもありました。
 これは、低い位置の葉っぱを、動物などに食べられてしまわないようにトゲで守っているらしいのです。特に若く小さな木は、全てトゲで覆(おお)われています
 1本の木から集めた葉っぱを並べてみると、こんなにバリエーションがありました。本当に自然って不思議ですね。

 ところで、“ヒイラギ”と聞いて真っ先に思い浮(う)かぶのはクリスマスでしょう。クリスマスの飾(かざ)りケーキには、必ずといっていいほどヒイラギの葉っぱと赤い実が使われています。しかし、これまで南但馬自然学校では、ギザギザの葉っぱや白い花は目にしても、赤い実などは一度も見たことがありません。
 疑問に思い調べてみると、クリスマスに使われる赤い実を付けるヒイラギは“セイヨウヒイラギ”という品種で、日本のものとは種類が異なることがわかりました。しかも、セイヨウヒイラギはモチノキ科、そして日本のヒイラギはモクセイ科と全くの別種です。
 
 トゲトゲの葉っぱを持つ2種のヒイラギは、形がよく似ているだけで「他人のそら似」という訳です。西洋ではクリスマスに、日本では節分にと、大切な行事に用いられるところをみると、洋の東西を問わず人々の生活に密着しているようですね。

文責 増田 克也


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