アキアカネ 08.08.26




稲穂が垂れる頃



 穂(ほ)を垂らした稲(いね)が色づき始めたお盆(ぼん)前から、田んぼの周りで赤トンボを見かけるようになりました。稲の朝露(あさつゆ)が消える午前7時辺りになると、1頭2頭と田んぼの上に姿を現し、9時を過ぎる頃(ころ)には、いつの間にかたくさんの赤トンボが飛び交います。トンボがひるがえるたびに、「キラリ、キラキラ」、透(す)けた羽が逆光線にきらめき、まるで万華鏡(まんげきょう)をのぞいているようです。

 この赤トンボの名前はアキアカネといいます。初夏、田んぼなどで羽化したアキアカネは、夏の盛りには高い山で過ごします。そして涼(すず)しくなり始めると再び平地に下りてきます。
 今回、里の田んぼに下りてきたアキアカネは、移りかわる季節をいち早く察知(さっち)した第一陣(だいいちじん)のようです。それでも、暑さが苦手なアキアカネたちのこと、太陽が高く上がる時間帯には姿を消し、夕方になるとまたどこからともなく現れ、稲の上に集まるブユなどの小さな虫をひたすら追っています。

 アキアカネの訪れと共に、田んぼの周りには、子どものにぎりこぶしほどに成長したカラスウリの実や、てるてる坊主(ぼうず)に似たザクロの実が、やがて来る秋の気配を感じさせましたが、時折、思い出したように鳴くヌマガエル騒(さわ)がしい声に、暑い季節に連れ戻(もど)されたような気分になりました。

 南但馬自然学校の周辺では、間もなく稲刈(いねかり)りが始まります。毎年この季節になると、田んぼに舞飛(まいと)ぶアキアカネと戯(たわむ)れた幼い頃の光景が懐(なつ)かしく思い出されます。

文責 増田 克也


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