ゴミグモ 08.07.15




ゴミ屋敷に潜むクモ



 南但馬自然学校の雑木林を歩いていると、中心に埃(ほこり)のようなものがくっついた、奇妙(きみょう)なクモの網(あみ)が目にとまりました。このクモの網は、これまで野山や建物の周りで何度か見かけたことがありましたが、今回改めて観察してみることにしました。

 「まずは、記録写真を」と、フラッシュを炊(た)くと、その光を小さく反射するものがあります。光った場所をよく見ると、どうやらそれは目のようです。そして、目の両側には足があることに気付きました。次に方向を変えて斜(なな)めから見ると、なんとなくクモの姿が見えてきました。

 このクモ、その名もゴミグモ。民家の周辺などで普通に見られる身近なクモで、網の中心にゴミを集めて擬態(ぎたい)するカムフラージュの名人です。それにしても、一度しっかりとゴミグモの姿を見てみたいものです。そこで網の真ん中でゴミになりすましているゴミグモを、指でツンとつついてみましたが全く反応しません。他のクモなら一目散(いちもくさん)に逃げ出すところですが、よほどカムフラージュに自信があるのでしょう、何度つついても完全無視を決め込んでいます。
 
 その時、網に1匹の虫がかかりました。すると今までピクリとも動かなかったゴミグモが、「スススッー」と音もなく網の中心から虫に向かって一直線に移動したかと思うと、オレンジ色の足で抱え込み「ガブ!」虫のお腹に噛(か)みつきました。
 チャンス到来(とうらい)! ゴミグモの姿を目を皿のようにして観察しました。う〜ん、流石(さすが)です。名前に「ゴミ」の文字が付くだけあって、体の色や模様はもちろんですが、背中から突き出したトゲのような突起がゴミの雰囲気(ふんいき)を見事に演出(えんしゅつ)しています。
 感心しながら無骨(ぶこつ)な姿に見とれていると、いきなりお尻から大量の糸を出し始め、獲物(えもの)は見る見るうちにぐるぐる巻きにされミイラのようになってしまいました。
 このゴミグモの獲物は、梅雨の頃から大発生するミズアブの一種です。毎年、この時季に山に入ると、うるさくまとわりつかれて困っていただけに、このときばかりはゴミグモが救世主に見えました。
 その後、捕らえた獲物を網の中心まで運ぶと、狩りの成功の余韻(よいん)にでも浸(ひた)っているのでしょうか、じっとして動かなくなってしまいました

 改めてゴミをクローズアップすると獲物の食べカスがたくさん付いています。このアブもゴミグモの糧(かて)となった後はカムフラージュの材料になるのでしょう。

文責 増田 克也



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