2002年度のノーベル物理学賞を理学系研究科名誉教授の小柴昌俊先生が受賞されました。 理学系研究科を代表し心から小柴先生にお祝い申し上げます。
この度の受賞は、1987年2月に起こった超新星からのニュートリノを神岡鉱山に設置したカミオカンデによって検出したことにより、ニュートリノ天文学という新たな研究分野を開拓した業績が高く評価されたことによります。 カミオカンデは小柴先生をセンター長として理学部に設置されていた素粒子国際研究センターが建設運用していたもので、この成果は同時に理学部・理学系研究科の成果であるといえます。この成果がノーベル賞に値するものであることは、超新星ニュートリノの検出直後から、広く認識されていたことであり、今年まで15年間待ち続けていた受賞であったといえましょう。
この成果の後、小柴先生の後継者は当初の目的の一つである太陽ニュートリノの観測を続けその量は理論値の半分程度しかないことを明確に示し、標準理論と観測にははっきりと矛盾があることを明らかにしました。 さらに小柴先生の後継者たちはカミオカンデを発展させたスーパカミオカンデを建設し、太陽ニュートリノの観測と大気ニュートリノの精密な観測によりニュートリノが質量をもち、異なったタイプのニュートリノと入れ替わりながら振動することを明確に示しました。このように小柴先生の研究は大きく発展し、さらにノーベル賞の対象となる研究成果があがっております。
理学系研究科は2002年4月に理学系研究科憲章を定め、「自然界の構造や進化を明らかにし自然界に働く法則や基本原理を探求し、人類社会を支える技術の基礎を築くと共に文化としての科学を創造する」ことを謳っております。小柴先生の受賞は、すぐ実利につながる応用的研究を重視し基礎研究を軽視する傾向が強い世情において、理学系研究科の教職員、学生のみならず、基礎科学を研究、また学ぶものにとって、この上もない励ましとなりました。 小柴先生は基礎科学の重要さについてしばしば発言されておりますが、今後とも基礎科学分野のリーダとして広く社会に発信していただきますようお願い申しあげます。
最後になりますが先生のますますの健勝を祈念いたします。
▼ ノーベル賞を受ける小柴名誉教授 (2002年12月10日