アナウンス原稿2019


1-1『ダンスセレブレーション』~
1-2『吹奏楽のための文明開化の鐘』

只今、兵庫県立佐用高等学校第5回定期演奏会が開演いたしました。
オープニングを飾りましたのは、、建部知弘作曲の「ダンスセレブレーション」でした。
 作曲者の建部知弘さんは、新潟県糸魚川市の出身で、その糸魚川市のバンド、糸魚川吹奏楽団の創立25周年を記念して2000年の初秋に作曲、同年10月14日の第22回定期演奏会で作曲者自らの指揮により初演された作品です。
 また、曲名にある「ダンス」は、3/4拍子を中心に書かれていると言うことと、「実は私は踊りたかったんだ!」という作曲当時の作曲者の心象も反映されています。タイトルの通り、明るくて勢いがあり、まさに演奏会のオープニングにふさわしい曲ではなかったでしょうか。
 続けてお送りします曲は高橋宏樹作曲、「吹奏楽のための文明開化の鐘」です。
 この曲はもともと金管アンサンブルのために作曲された曲で、演奏していた侍BRASSシリーズの中でも一番人気のある曲でした。冬のアンサンブルコンテストでも毎年必ずどこかの団体が演奏するほどの定番曲なのですが、その曲を作曲者自身が吹奏楽版にアレンジし、再販したものです。
 この吹奏楽版は最初、迫力のある金管ファンファーレから始まり、その後のトランペットのゆったりとしたソロ、そして、再び金管のファンファーレに戻っていきます。タイトルにもあるように、「鐘」、つまりチャイムが目立つようにアレンジされており、元気よく明るい未来が見えるようなアレンジになっています。
実はこの曲は今から6年前、顧問であり吹奏楽部OBでもある谷口先生が佐用高校に赴任された年の吹奏楽コンクールで演奏した曲でもあります。当時の佐用高校吹奏楽部は、夏のコンクール30年間連続銀賞という超不名誉な記録を更新していました。そんなとき谷口先生が赴任され、当時のメンバーのために選んだのがこの曲であり、その年見事30年ぶりの金賞を獲得することができたのです。それ以来西播地区大会では5年連続金賞を受賞し、その記録は今も更新中です。そんな佐用高校吹奏楽部のターニングポイントになったこの曲を、今のメンバーで演奏したいと思います。6年前のメンバーに負けないような明るく華やかな演奏を目指しますので、どうぞお聴きください。



1-3『マナティ・リリック序曲』

 続いてお送りします曲は、ロバート・シェルドン作曲の『マナティ・リリック序曲』です。
作曲者のロバート・シェルドンは1954年生まれのアメリカの作曲家で、主に小編成から中編成までの作品を多く手掛けています。難易度もそれほど高くなく、親しみやすいメロディとシンプルな構造のオーケストレーションはとても演奏しやすく、特に中・高校生に人気の作曲家です。
この『マナティ・リリック序曲』は、作曲者がフロリダ州マナティーの町のシビック・センターのオープンを祝って作曲したもので、作曲者の指揮、同町の高校選抜バンドによって1985年に初演されました。
曲は、速い、遅い、速いの3部形式で、木管のリズミカルな動きの下にトランペットとトロンボーンが華やかにファンファーレ風なテーマを奏し、全楽器が加わって導入部を形作ります。導入部のあとは、木管を中心としたコラール風な美しいメロディーとなりますが、テンポは変わりません。遅いところでは、トランペットのソロがあらわれます。そして、再びファンファーレ風な華やかなテーマに戻ってきます。さわやかなオープニング、深みのあるメロディー、抒情的な中間部など、ロバート・シェルドンならではの吹奏楽の魅力が凝縮された作品です。先ほど演奏した「文明開化の鐘」とはまた違うファンファーレをご堪能ください。



1-4『アット・ザ・ブレイク・オブ・ゴンドワナ』

  続いてお送りする曲はベンジャミン・ヨー作曲の『アット・ザ・ブレイク・オブ ゴンドワナ』です。
 作曲者のベンジャミン・ヨーは、1985年生まれのシンガポールの作曲家で、吹奏楽の世界では若手の作曲家です。
 日本では中高生に人気の吹奏楽ですが、それはアジアでも同じで、中国やシンガポール・マレーシアなどでも今吹奏楽人気が高まっています。日本人の作曲家もよく招待されて演奏会の指揮をしたり、作品の委嘱を受けたりしています。
 この曲『アット・ザ・ブレイク・オブ・ゴンドワナ』は、2008年にシンガポールのシンミン・セカンダリー・スクール・シンフォニック・バンドの委嘱で作曲され、翌年5月26日、同市のエスプラネ-ド・コンサート・ホールにおいて、ブランド・タン指揮、同バンドの演奏で初演されました。
 曲名に含まれている“ゴンドワナ”とは超大陸のことを指し、現在のアフリカ、南アメリカ、南極、オーストラリアの各大陸に、インドなどの諸島が大きくまとまった大きな大陸であったとされています。そのゴンドワナ大陸が分裂する様子を描いたこの曲には副題に『吹奏楽のための音詩』と書かれています。『音詩』とは音のポエム、音で描かれるうたのことを表しているのですが、この副題のほかに楽譜の中には超大陸の分裂する様子を表す7つのテーマが記されています。
そのテーマを紹介します。

1. 超大陸の壮大さ
2. 4500万年前
3. オーストラリアと南極の分離
4. “ナチュラル・ブリッジ”と“ザ・ギャップ”の印象
5. 予見される悲劇
6. 未来:“ナチュラル・ブリッジ”の崩壊
7. 母なる大地の素晴らしさ

これら7つのテーマの中で、超大陸の分裂にあたる部分、3. オーストラリアと南極の分離 では、その分裂の様子が打楽器群のアンサンブルで表現されているほか、6. 未来:“ナチュラル・ブリッジ”の崩壊 の場面でも打楽器群のアンサンブルから変拍子を伴ってバンド全体で迫力のあるサウンドを奏でながら最後に繰り返される壮大なテーマに流れ込み、曲を締めくくっていきます。
 今回の定期演奏会の曲の中で最も難しく、苦労した曲です。まだまだ未熟ではありますが、今できる最高の演奏をしたいと思いますので、どうか大自然の雄大さをイメージしながらお聞きいただけたらと思います。
それでは第一部最後の曲、『アット・ザ・ブレイク・オブ・ゴンドワナ』をお聴きください。