《考察》 | ||||||
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Tの震度別分布とUの被害別分布から被害状況が震度とどのような関係にあるのかを考えてみたが、すベて震度だけでは片づけられないことがわかる。学校の立地条件、建物の方向、さらには理科室が何階にあるのか、備品・器具等の保管状況はどうだったのか、などといった色々な条件が重なり合ってそれぞれの被害状況がかなり違ってきているように思われるのだが・・・・。 今回のような激震に襲われると本当に幸運を祈るしかなすすベがない訳だが、私たちにでき得る最大限の災害防止策はないものか、なにか少しでも参考になることが見つかればという観点より、寄せられた回答からそれぞれの項目に分けて考察していきたいと思う。 | ||||||
【備品について】 | ||||||
各学校ともに保管庫・戸棚などの収納庫の被害、そしてそこに収納してあった物品の被害が非常に多い。中でもスチール製の物、2段重ねの物、また壁につけず立ててある戸棚の転倒が特に目立つ。できれば壁に取り付け式の収納庫が望ましい。 ほとんどの備品類が転倒、落下によって破損している。今後の保管方法にはちょっとした工夫によって転落防止できることもあるのではないだろうか。 どこの学校でも備品類は新たに補給するための予算獲得が非常に困難と思われるので、災害による被害はできるだけ避けられるように工夫することが大切である。 | ||||||
【器具・消耗品について】 | ||||||
**ガラス器具類その他小物について** 震度7ではなすすべもないけれど、被害をできるだけ小さいものにするために収納方法を考えることだと思う。 @普段使用するための器具はかご・箱等容器に入れて引き戸戸棚に収納する。開き戸の場合は桟をつけたり必ず施錠をするとよい。かごの中はあまり余裕を持たせないこと。 Aピペット類・ガラス管類・小物類等は専用のプラスチックケースや整理箱、小引き出し等を利用するとよい。 Bメスシリンダーはかごの中に横に倒して入れるか、また大きなものはパッケージの箱を利用して並べるとよい。(図1) | ||||||
片方のみふたを取り重ねる →![]() | ||||||
C予備のガラス器具類はパッケージのまま戸棚に収納すると2mくらいの落下では被害がない。 D収納庫はつくりつけに越したことはない。スチール戸棚は固定が必要。奥行きのある戸棚の方が転倒しにくい。間仕切り用に設置するより壁際の設置がよい。 E常に整理整頓に心がけることが必要。 | ||||||
**生物材料について** @培養容器は許す範囲で蓋物を使う(ビーカーよりシャーレ) A種として残しておける状態を考える。(コーヒー瓶のゾウリムシ) できるだけ速い対応で生存は可能である。各学校で飼育しておけば増やすことは容易である。 | ||||||
【薬品について】 | ||||||
一番被害が大きいのは薬品庫内の薬品収納戸棚や劇毒物用の薬品庫が転倒し、薬品類がすべて落下破損した場合である。震度7の直下型地震に襲われたらどうしようもないとは思うが、被害を少しでも軽くするには耐震性の薬品庫や、つくりつけの戸棚がよいと思われる。戸棚には転落防止用の柵や横棒を取り付ける。それに加えて酸やアルカリは別々に入れ、水と反応し易いもの、火気厳禁のもの、気体が混合すると良くないものを考慮して収納する。 また金属ナトリウムなどの下には砂利を敷いておく。 薬品同士がぶつかって破損しないように仕切のあるケースに入れて戸棚にしまう。施錠する事を習慣にする。さし込み鍵をしているだけで、戸が開かず助かった例が多い。 生徒用希釈液はオープンの棚に入れておくと使い勝手はよいが、落下して一番多くの被害が出ている。トレイやケースに入れ、必ず戸棚に入れておくとよい。 今回のような大地震が起きた場合、一番恐ろしいのは火災である。万一薬品が破損して発火してもコンクリート製の薬品庫で隔離壁があれば被害は少ないのではないかと思う。 地震の揺れは上の階ほど激しいので、薬品を取り扱う化学や生物は下の階にあるのが望ましい。 もしまたこのような地震が実習中に起きたとしたら、と考えるだけで恐ろしい気がする。しかし、何が出来るか、何をすベきかを常に頭の片隅に置いて置かなければいけないと思う。 | ||||||