- 組換えDNA実験について
高等学校での組換えDNA実験は、発光タンパク質、だ液に含まれる酵素アミラーゼなどを作る遺伝子を、病原性がなく自然環境では生存できない大腸菌や酵母菌に組み込む実験など安全性が確認されているものに限定される。これらは、直接触れたり口に入っても危険性はなく、万一環境に放出されても影響をあたえる可能性はほとんどないが、遺伝子組換えによって自然界に存在しない微生物が実験者に感染したり、実験室外へ漏出したりすることも予想される。DNAを粗雑に扱うと実験者や処理業者らが吸い込んだり、傷口から入り、細胞に取り込まれて発ガンなど人体に危害を与える危険性を周知しておかねばならない。文部科学省の「組換えDNA実験指針」により、このようなバイオハザードからの安全性を確保するために生物学的封じ込めと物理的封じ込めが定められている。
- 参考 -
○ | 組換えDNA実験指針(平成14年1月31日付文部科学省告示第5号) |
| 病原体に対する一般的なバイオハザードの知識に基づいて、組換えDNA実験におけるバイオハザード防止策が講じられている。基本的には組換え体を外に拡散させないように指針が作られ、高等学校でも実験に取り組めるよう配慮した「教育目的組換えDNA実験指針」の枠組みが新設された。 |
教育目的組換えDNA実験の実施要件
- 実験指導者の責務
- 組換えDNA実験を実施した経験を有する者が、実験の指導者となること
- 指針の考え方を理解していること
- 実験指導者が実験の計画をするにあたって所属機関の長と実験室が設置されている機関の長の同意を得ること
- 実験従事者の適切な指導と実験全体の管理及び監督
- 実験従事者の名簿、実験場所、実験日時、使用材料並びに組換え体の廃棄方法を記載したの記録を作成し、保存すること
- 実験に用いる材料の指針別表7への適合確認
- 使用できる「宿主−ベクター系」及び「供与DNA」は、実験実施の前に、指針別表1、及び7に掲げるものであることを確認すること
- 実験実施規定
- 実験室の設計
実験室は初等中等教育機関の通常の理科実験室と同程度の設備を備えていること
- 実験実施要項
- 実験中は、実験室の窓及び扉は閉じておくこと
- 実験室内での飲食、喫煙又は食品の保存はしないこと
- 組換え体を取扱い後又は実験室を出るときは、手を洗うこと
- 機械式ピペットの使用が望ましい。また、口を使うピペット操作は行わないこと
- 組換え体の保管又は運搬を行う場合は、他の微生物又は組換え体と混同しないように管理すること
- 実験終了後は煮沸又は消毒液の投入等の措置により、組換え体を滅菌すること
- 組換え体の付着した器具等は、消毒又は減菌すること
- 実験室は整理し、清潔を保つこと
- その他実験指導者の定める事項を遵守すること
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