4.手入れの仕方

(1)留意点
顕微鏡使用後はレンズが汚れていることが多い。その都度拭き取ることができれば最良だが、数が多いだけに見落としていることもあるので、定期的にレンズの汚れ、かびの除去、清掃と鏡体機械系の整備が必要である。分解できないタイプの接眼レンズはかびさせない。
尚、顕微鏡の構造や使い方は機種によって多少異なるので、取り扱い説明書を必ず参考にする。
顕微鏡は湿気を嫌う。対物レンズ及び接眼レンズは、乾燥剤を入れたデシケーター内に保存することが望ましい。かびが生えないようにすることが大切である。
顕微鏡には塵埃が大敵。清潔な柔らかい毛筆か、ブロアブラシの風やエアブロアーで塵を払う。
すり合わせの部分(粗動装置の上下動部分・コンデンサーの上下動部分・複式メカニカルステージなど)には、特殊なグリスが使われている。この部分には時計油その他の機械油は使わないこと。
レンズ拭きは、洗い晒しのガーゼやさらし布・レンズペーパーなどがよい。レンズクリーナークロスは洗濯も可。
例)ミクロスター(帝人) トレシー(東レ)
顕微鏡修理工具セットには、接眼レンズを分解するため(自在コンパス)や粗動ねじを緩めるため(ペンチ型工具)の特殊な工具がある。
レンズ・反射鏡・クリップなど、部品の購入はできるが、処分する顕微鏡があれば、使用可能な部品は取っておくと便利である。特にねじなど。
(2)故障の状態と原因及びその処置
故障の状態故障の原因処  置
鏡筒自然降下ステージ自然降下(ピントが合ってもすぐぼやけてしまう)粗動テーパーの緩み鏡筒の粗動ハンドルの軸は、テーパー軸になっており、検鏡者も自由に調節することが出来る。 新型は粗動ねじ奥にある。 まず、両手で左右のハンドルを握り、手拭いをしぼるよう(左右同時に時計方向に廻す)に静かに回転させるとハンドルは固く重くなり、その反対の方向にねじると緩み、動きは軽くなる。
粗動ねじがかたい@粗動軸の締め過ぎ、圧力のかけ過ぎ
A摺動面のグリスの固着
Bハンドルのパッキン擦り減り
@鏡筒自然降下(ステージ自然降下)の処置と逆の操作をする
A鏡筒をぬいて、固くなったグリスを取る
B新しいパッキンと取り替える
対物レンズの汚れ@ 接眼レンズをはずしたまま放置
Aレンズを指で触れたり、試料に接触させた
@内部の塵は、ブロアブラシやエアブロアーを使う
A先端レンズのみきれいな布で拭く
アルコールやレンズクリーナーはレンズの接着剤を溶かす恐れがあるので、使用は最小限にとどめる
接眼レンズの汚れ@ 使用後の整備不良
Aレンズ面を指で触れた
きれいな布で拭く
分解した場合は組み合わせを変えないようにする
レンズの傷レンズに塵やごみがついたまま拭いた修理不能
本体の汚れ  99%エタノール、オーディオ製品のクリーナー、レンズクリーナーなどで拭く
(3)レンズ清掃
ア.接眼レンズ及び集光器レンズの拭き方
分解できるものは、レンズ単体に分解して拭く。
イ.対物レンズの拭き方
対物レンズは、一般には分解できない。清掃は図3のように、先端のレンズを拭き、一番上のレンズの埃を飛ばすにとどめる。
先端を拭く場合、アルコールやレンズクリーナーはレンズの接着剤を溶かすおそれがあるので、最小限にとどめる。
ウ.仮拭き
レンズの上にあるゴミ・埃を吹き飛ばし、布に少量の水をつけて拭く。
エ.仕上拭きの要領
布やレンズペーパーは常に新しい面を使用する。
分解した接眼レンズ(レンズ単体)の拭き方
布を折って、図(A)のようにレンズの中心を親指と人差し指の間にはさむ反対側の手で、レンズの縁をつまんで回しながら、図(B)のように中心から外側へ移行していく。この時、レンズについている汚れを残さないようにその汚れをまとめながら外側へ出してしまう要領で行う。少なくとも同じことを3回以上繰り返す。
枠に入ったレンズの拭き方
面積の小さいところを拭くためには、ピンセットや竹串や先をとがらせた割り箸に布を細く巻き付け、先端に少量のアルコールをつけて、中心から周辺へ回しながら拭く。
(4)メーカーの顕微鏡整備
顕微鏡にはピントを合わせる際、鏡筒上下動式とステージ上下動式の二通りの方法があり、構造も大きく違う。鏡筒上下動式のものをメーカー(オリンパス)に出した場合のチェック部分は次のようなものがある。
修理の内容
1.粗動アリの面+角すり合面のグリス(BCグリス)の交換
2.ピニオンメタル中+ピニオン軸(OPGグリス)の交換
3.粗動ハンドル左、右のセルの交換
4.回転板しぼりのグリス(OPGグリス)の交換
ステージ上下動式は、基本的には、鏡筒上下動式と同じでよいと考えられるが、メーカーにまかせる方がよいかもしれない。
顕微鏡の機械部分を不用意に解体することは絶対にしないこと。清掃には細心の注意をする。内部の汚れ等は販売店に相談する。
(5)光源装置(照明)の工夫例