2.ブレファリスマ Blepharisma iaponicum

 別名  ベニイロミズケムシ
分類
 原生動物門、繊毛虫綱、全毛類
形態・特徴
 紅色をした大型の繊毛虫。細胞の長さは、150〜500μ。バクテリアや小型の鞭毛虫などを食べて生活するが、餌がなくなると、共食いをして長さ700μ、幅300μの巨大虫になる。細胞の中には、ブレファリスミンと呼ばれる色素を持っており、紅色をしている。
 動きはゾウリムシよりもゆっくりで、環境が悪化するとシスト(包嚢、cyst)とよばれる、核に囲まれた丸い細胞になる。暗い所を好み、光に当てると色が変わる。また、光から逃げようと,バックしたり、クルクル回転を始めたり、遊泳スピードをあげたりして『光回避反応』と呼ばれる行動をする。
1)培養法(基本的には、ゾウリムシと同じ)
 A.ワラ浸出液
  ワラ茎を2〜3cmの長さに切り、10〜15gを蒸留水1ml中に浸し15〜20分間煮沸する。一昼夜放置し、自然状態で枯草菌を増殖させブレファリスマを接種し培養する。
 B.チョークレ一液培養
  チョークレー液に2〜3粒の米粒を入れ、キロモナスを接種し培養する。
継代培養する場合は古い培養液を2/3ほど捨て、新しい培養液を加え2〜3粒米粒を加え、暗所で培養する。
2)教材としての特徴
 美しい紅色をした繊毛虫で体が大きく、観察して楽しい。
 動きがゾウリムシより遅く観察しやすい。

3. テトラヒメナ Tetrahymena

分類
 原生動物門 繊毛虫綱 全毛類
形態・特徴
 体長40〜80μ、卵形の小形の繊毛虫で体全体にほぼ等長の繊毛をもち、前端部に近い口を囲んで右側に1枚の波動膜、左側に3枚の口前膜、合計4枚の膜装置を持つのでこの名がある。大核と小核各1個を持つが、無小核の株もある。収縮随は後部に1個。淡水にごくふつうに見られるが、約30年前から無菌的に合成培地で培養が可能となりきわめて繁殖も速く、遺伝的に安定している。ゾウリムシと同様に培養する。アメーバなどの餌としても使う。

4.ミドリムシ Euglena

分類
 原生動物門 鞭毛虫綱 植物性鞭毛虫類
形態・特徴
 体長30〜500μ、植物学ではミドリムシ植物門のユーグレナ属に分類される。 葉緑素をもち光合成を行い、セルロース質の細胞壁をもつなど植物的である面と、口や収縮胞があり、自由に運動したり、腐生栄養で生き続けることなど動物的な両面がある。種の特徴は、葉緑体、パラミン粒、体の大きさおよび形、体の伸縮性、表皮の構造、鞭毛の長さ、ヘマトクローム顆粒の存在などによって示される。葉緑体を含む色素体は、円盤状や紡錘形で、その形と数は種の特徴となる。春から夏小池沼に出現して水色を変え、「水の華」を形成する。
1)採集法
 有機質の多い割合に汚れた溝、水田、池沼に生息する。春、水田の泥の表面に、緑色の薄膜をつくり群がるので、これをスポイドで採集検鏡すれば見つかる。
パスツールピペットで、培養液中に数個体のミドリムシを取り、培養液中を数回くぐらせるときれいなミドリムシを得ることができる。
2)培養法
 A.土とエンドウ培養法
  容器に土2g、エンドウ豆1/4個、蒸留水10mlの割合に入れたもの。ミドリムシを植え継ぐ。
 B.土2gと蒸留水に0.05%の割合にハイポネックスを加えたものを使用する。
 C.蒸留水に0.01%の割合にハイポネックスを加え、さらに10mlあたり0.5mlの土壌浸出液(土250gに蒸留水1リットル加え1時間煮沸、12時間放置、ろ過した液)を加えた液にミドリムシを植え継ぐ。いずれも滅菌する場合は、オートクレーブで滅菌する。
  培養は、室内で直射日光をさけ窓際に置けばよい。大形容器を用いるより小形の容器で数多く培養したほうがよい。注意して培養していてもうまくいかないことが多いが、数多く分離して簡単な培養液で育つ株をさがし出すのが第一である。
  春先に池の岸の泥の表面に大量に生息しているのを泥と一緒に採集し、シャーレにいれ、少し蒸留水で湿らせておけば、数カ月は実験に使うことができる。
  土・・・農薬などを含まない表土をふるいにかけ乾燥させ保存したもの
3)分離法
 ミドリムシは一部分光が入るようにあけて他を黒紙でおおったシャーレに入れ、窓際に置くと正の走光性によって光の方向に集まる。

5.アメーバー Ameba

分類
 原生動物門 肉質虫綱 根足虫類
形態・特徴
 体長は20〜600μ
1)採集法
 野外の溝、池沼などの底の泥、落葉、水草を水と一緒に採集し検鏡するとアメーバが発見できる。夏の水田の片すみに、吹き寄せられた泥の皮膜を採集すると、多数のアメーバが発見できる。
 採集した水と米粒1〜2粒をシャーレに入れ、数日培養すると多数のアメーバが増殖し、探しやすくなる。新しい培地を用意しパスツールピペットで吸いとったアメーバを増殖すればよい。
2)培養法
 アメーバの培養液もいろいろ発表されているが、代表的なものを次にあげる。
 KCM液 チョークレー液
 
塩化カリウムKCl4mg
リン酸水素カルシウムCaHPO46mg
硫酸マグネシウムMgSO42mg
H2O1000ml
 
塩化ナトリウムNaCl10ml
塩化カリウムKCl4mg
塩化カルシウムCaCl26mg
H2O1000ml
 
直径15cmのシャーレに培養液を2cmほど入れ、キロモナスを接種し、1日放置後アメーバーを植え継ぐ。
 
古い培養液を2/3捨てる。
(アメーバは底にはりつきほとんど流れない。)
新しい培養液を加える。
新しいキロモナスを加えてもよい。
ふたをして暗所25〜27℃で培養。培養容器は5個位用意する。
 良好な培養条件では、アメーバは細長い形で、仮足をよく出して運動している。キロモナスが増えすぎると縮んで円くなる。キロモナスが増えていれば米粒を少なくする。
3)分離法
 アメーバはスライドガラス上に接着させた後、培養液でシャーレ内に洗い落とせばよい。

6.キロモナス Chilomonas

分類
 原生動物門 鞭毛虫類
形態・特徴
 細胞は無色で長さは30〜40μ。餌として使う。チョークレ液に米粒を入れて培養する。