5、主な薬品の保管時の注意(具体例)                表1

A 光に不安定な試薬 化学物質は一般に250nm〜450nmの範囲の波長の光に著しく影響され、変化を起こすと言われている。この波長の光は太陽光以外にも電灯などの人工灯からの光も含まれる。したがっ て、光に不安定な試薬は、褐色ビンなどに入れ、さらに黒色紙などで覆い、必ず暗所に置く。
B 熱に不安定な試薬 一般に化学反応の速度は10℃温度が上昇すると2倍になると言われている。経時変化しやすい試薬についてもその点に留意して、冷蔵庫や冷凍庫に保存し、できるだけ劣化を防止するよ うに心がける。  
C 酸素に不安定な試薬 アルデヒド類、アミン類の多くは大気中の酸素により酸化され、その品質が劣化しやすい。特に酸化されやすい試薬保管にあたっては、十分に容器の気密性に注意し、場合によっては不活性 ガスを封入するのも品質を保つ上で有効である。  
D 水分(湿気)に不安定な試薬 酸、ハロゲン化物、無水物などは、空気中の湿気と反応して変質する。また、吸湿性の試薬は、大気中の水分を吸収して潮解し、劣化をきたす。このような薬品の使用に際しては手際よく、 速やかに扱い、使用後は、直ちに気密する。必要に応じてデシケーター内に保存する。  
E 二酸化炭素に不安定な試薬 強アルカリやアミン類および炭酸より弱い酸の塩基性塩(ex.シアン化ナトリウムなど)は大気中の二酸化炭素を吸収し、炭酸塩に変化しやすい。これらについては湿気に不安定な物質と 同様な注意を行う。

6、よく使う薬品で保管に注意を要するもの     表2

 物質性質表1参照表3参照
金属カリウム吸湿・酸化(石油中に保存)C・DC・N
ナトリウム吸湿・酸化(石油中に保存)C・DC・N
リチウム吸湿・酸化(石油中に保存)C・D 
マグネシウム(リボン・テープ)酸化 
非金属赤リン吸湿Q
黄リン酸化(水中に保存)M
活性炭 吸湿 
酸化物酸化カルシウム吸湿・CO2吸収D・E 
酸化マグネシウム吸湿 
過酸化水素水揮発(低温保管庫に保管・遮光)@・L
塩化物塩化ストロンチウム潮解 
塩化カルシウム潮解 
塩化マグネシウム潮解 
塩化亜鉛潮解 
塩化第一鉄潮解 
塩化第二鉄潮解 
塩化コバルト潮解 
塩化第一スズ潮解 
塩化第二スズ潮解 
塩化銅潮解 
塩化アンモニウム昇華 
さらし粉吸湿・光に不安定A・D 
硫酸塩硫酸ナトリウム(水和物)風解  
亜硫酸ナトリウム酸化 
亜硫酸水素ナトリウム潮解 
チオ硫酸ナトリウム潮解 
硫酸カルシウム 吸湿 
硫酸マグネシウム(水和物)風解  
硫酸アルミニウム(水和物)風解  
硫酸亜鉛風解  
硫酸第一鉄(水和物)風解  
硫酸銅(水和物)風解  
硫酸ニッケル(水和物)風解  
硝酸塩硝酸ナトリウム吸湿 
硝酸ストロンチウム吸湿 
硝酸カルシウム 潮解 
硝酸ニッケル潮解 
硝酸銅潮解 
硝酸銀 光に不安定D・J
炭酸塩炭酸アンモニウム(水和物)風解  
炭酸ナトリウム(水和物)風解  
ハロゲン化物 ヨウ素昇華・光に不安定A・BC・J
ヨウ化カリウム 光に不安定 
臭素揮発 J
臭化カリウム潮解 
四塩化炭素揮発 J
クロロホルム揮発  
その他の無機物チオシアン酸カリウム光に不安定 
ヘキサシアノ鉄(V)カリウム光に不安定 
炭化カルシウム(カーバイド)吸湿 
過マンガン酸カリウム光に不安定 
シリカゲル吸湿 
アルカリ水酸化カリウム潮解・CO2吸収 
水酸化ナトリウム潮解・CO2吸収D・EC
水酸化バリウムCO2吸収D・E 
アンモニア水揮発 @・C
石灰水CO2吸収 
無機酸塩酸揮発 C
硫酸吸湿 
硝酸揮発・光に不安定G
炭化水素石油エーテル揮発  
石油ベンジン揮発  
ベンゼン揮発  
トルエン揮発  
キシレン揮発  
ナフタレン揮発  
アルコールメタノール揮発  
エタノール揮発  
エーテル揮発・光に不安定 
アルデヒド ホルムアルデヒド揮発・酸化 
アセトン揮発 
有機物フェノール潮解 
アニリン酸化 
色素・染料 サフラニン光に不安定 
フクシン光に不安定 
カーミン光に不安定 
酢酸カーミン光に不安定 
メチレンブルー 光に不安定 
指示薬メチルオレンジ光に不安定 
ネスラー試薬光に不安定 
ヨウ素液光に不安定 
ホルモン酵素等3−インドール酢酸熱に不安定 
3−インドール酢酸カリウム熱に不安定 
キチネン(カイチネン) 熱に不安定 
ヘモグロビン熱に不安定 
ATP熱に不安定 
*揮発・昇華
薬品そのものが変質するのではなく、量が減ったり濃度が薄くなる。(気密容器に入れ、冷所に保存する)
*潮解と風解
潮解は、大気中の水蒸気を吸収して、それに溶解する現象。
風解は、結晶水を含む結晶または水和物が、結晶水を失って、粉末になる現象。