5.スンプ法による化石(フズリナ)の観察

[目的]スンプ法によって、フズリナの断面を観察する。
[準備]フズリナを含む石灰岩  岩石薄片作製用具(鉄板・ガラス板・カーボランダム#400〜#500・アランダム#800)  スンプセット(スンプ液・セルロイド板)  塩酸  酢酸
[操作]
プレパラートの作り方
観察の仕方
  • セルロイド板を解剖顕微鏡で検鏡する。または、セルロイド板をスライドの枠にはめ、スライド投影装置でスクリーンに投影して観察する。フズリナの断面をスケッチする。
  • フズリナの断面を、標本や図鑑と比べて、種類と時代を調べてみる。
[留意点・工夫点]
スンプ法は、岩石プレパラートの作製に比べて、難しい技術を必要とせず、時間もかからない。
ハンマーで石灰岩を割るときの底面の大きさは3cm×3cmくらいが適当。(操作1)
石灰岩は普通の岩石よりきわめて軟らかいので十分に注意しないとすぐすり減ってしまう。
フズリナの中心を通るように研磨できるとよい。初房(殻の中央部)が最大のところで研磨をやめるのがコツ。(操作2)
全体に光沢がなくなり、凹凸ができたところで塩酸から取りだし、よく水洗する。この時、手で直接触れない。(操作4)
水洗後、フェルトや金属磨きの柔らかい布等で、表面に光沢がでるまで磨くとなおよい。
光沢が残る程度で酢酸から取り出す。酢酸に入れるのは、表面に被膜をつくるためである。(操作5)
塩酸や酢酸の容器は、大きめのどんぶりやポリバケツを利用するとよい。
気泡が入らないように注意してスンプ板に貼りつける。(操作6)
スンプ液のにおいがこもらないように、風通しをよくする。
スンプ液は、酢酸アミル・アミルアルコールを等量に混合する。
スンプ法については、生物「植物組織の観察」を参照。
フズリナ(紡錘虫)は、原生動物根足綱に属する有孔虫の一種で、種類によって外部形態や内部構造が異なる。石灰岩中に多く含まれ、大きなものは1cmに近いものもある。切断のしかたでさまざまな形にみえる。観察のポイントは、形・長さ・幅・隔壁の形・巻数・初房などである。
フズリナは分布も広く進化も速いので、古生代石炭紀と二畳紀の代表的な示準化石として、石炭紀、二畳紀の地層区分に大いに役立っている。山口県秋吉台の石灰岩は、フズリナの研究により地層が逆転していることがわかった。近年、フズリナの世界的分布や進化の研究によって、大陸や海洋底の移動、海水準の変化が明らかになってきた。