1.岩石、鉱物の見分け方と化石の取り扱い

[目的]岩石、鉱物、化石を見分けるポイントを知る。
a.肉眼、ルーペによって岩石を見分ける。
[準備]岩石標本 ルーペ
[操作]
  次の順序で見分ける。
いろいろな岩石変成岩鉱物が一定に方向に並ぶ"片理"が見られる。広域変成岩(結晶片岩、片麻岩など)に顕著。
変成岩でない堆積岩砕屑物(レキ、砂、粘土などの岩石片、火山灰など)が固まった感じとしてわかる。大きな岩石片や化石があれば、有力。
堆積岩でない火成岩種類は色や結晶のしかたで識別する。
 
[留意点・工夫点]
この他、チャート(硬い)、石灰岩(CaCO3からなる)、ホルンフェルス(とがって割れる、緻密) は識別しにくい。
その岩石がどこで採取されたものであるかわかれば、地質図から、何か見当をつける手だてと なる。
火成岩は、次のようにして、分類することができる。
<火成岩の分類>
1)火成岩は、マグマが地殻の割れ目から上昇し、地下で固結したり、地表に噴出して冷えて固まってできた岩石であるので、火成岩の分類するポイントとなる組織・色指数・密度・Si02の重量%・造岩鉱物の構成・化学組織は、マグマの性質と冷却温度によって決まる。
 深成岩「等粒状組織」…粗粒の結晶からなる
マグマが地下深部で冷え固まって形成→造岩鉱物の結晶が成長
 火山岩「斑状組織」…大きな結晶の斑晶と石基がみられる
マグマが急激に冷え固まって形成→マグマ中ですでに形成されていた結晶以外は造岩鉱物の結晶の成長がよくない。火山ガラスや小さな結晶(石基)の形成
2)造岩鉱物は、融点の高いものから晶出する。早期には自形(鉱物本来の結晶の形)で晶出し、温度が下がると、他形(鉱物の隙間を埋めるように晶出し本来の結晶面が発達しない形)となる。
3)色を見る。(色指数を調べる)
 造岩鉱物の有色鉱物の占める割合
  
 石材店へ行って研磨した面のあるいろいろな石材の破片をもらってくるとよい。研磨した面に方眼目盛つきトレーシングペーパー(透明1o方眼)を当てて鉱物を数え、有色鉱物の割合を計算する。
4)密度を測定する。(「岩石と鉱物の密度測定」を参照)
 密度は白っぽい方が小さく、黒っぽい方が大きい
5)Si02の重量%・造岩鉱物の構成・化学組織
 
b.鉱物顕微鏡によって火成岩の種類を見分ける。
[準備]岩石プレパラート(花こう岩、斑れい岩、流紋岩、玄武岩など) 鉱物顕微鏡
[操作]岩石プレパラートを観察する。
[留意点・工夫点]
石英を識別できれば、組織によって岩石をきめることができる。(石英の判別の仕方は、鉱物顕微鏡のところを参照)
 
等粒状組織で石英を含む花こう岩
等粒状組織で石英を含まない斑れい岩
斑状組織で石英を含む流紋岩
斑状組織で石英を含まない玄武岩
深成岩(花こう岩、斑れい岩)では、構成鉱物の種類だけでなく晶出順序や融点の高低がわかる。 (自形、半自形、他形)
鉱物顕微鏡を使うかわりに、生物用顕微鏡を使用することもできる。上方用の偏光板は接眼ミクロ メーターの場所に偏光板(シート)を入れたり、図のフィルムケースを接眼レンズの上にかぶせて使用する。下方用の偏光板(シート)はスライドガラスの下か、ステージの裏につける。
 
<鉱物顕微鏡の扱いと観察の仕方>
1)鉱物顕微鏡の調節
 平行ニコル(上方ニコルをはずし、下方ニコルだけにした状態)にし、小さい鉱物を中心にくるように ステージにおく。ステージを回転させても、鉱物が十字線の中心からはずれないように、調整ねじで調整する。ニコルとは、三角形のプリズム形に切った方解石を2つはり合わせたもので、光に対して、上下2つのニコルが互いに直角になるようにしてある。特定の方向に振動する光のみが通るようになっている(偏光)。現在では、高価な方解石のかわりに偏光板(ポーラ)が使われているが、"ニコル"と いう名を使っている。上方ニコルは、自由に出し入れできるようになっている。
2)平行ニコルでの観察
 無色鉱物は無色透明で、有色鉱物はそれぞれの色を示す。
 有色鉱物の場合、ステージの回転につれて複屈折するため、色が変化するものがある(多色性)。黒雲母で顕著。
 鉱物によっては、一定の方向に割れやすい性質をもつものがある(へき開)。へき開は、1方向または2方向に筋(へき開線)が見られる。黒雲母、角閃石、輝石で顕著。
3)直交ニコル(上方ニコルを挿入した状態)での観察
 鉱物に特有の色が見られるものがある(干渉色)。
 ステージを回転させると、90°ごとに視野が暗黒になる(消光)。消光の状態のままで平行ニコルにもどし、鉱物のへき開線(または自形鉱物の長辺)と十字線とのなす角(消光角)を測定する。消光角が0°の場合を直消光、そうでない場合を斜消光という。
4)石英の判別
 平行ニコルでは多色性、へき開なし、結晶は不規則な粒状。直交ニコルでは灰色、ステージを回転していくと急激に消光し、ふたたび急激に現れる特徴的な消光をする。また、鉱物中を暗黒部が動いていくような波状消光をするものもある。
5)斜長石の判別
 図に示すようなしま状または累帯状の特徴的な消光をする。
  
造岩鉱物の調べ方
 
c.鉱物の物理的性質を観察し、鉱物の鑑定をする。
[準備]いろいろな鉱物 条こん板 モースの硬度計 ハンマー 金床
[操作]色、光沢、条こん色、形(面角、へき開)、硬度などを調べる。
[留意点・工夫点]
モースの硬度計のかわりに硬度の目安として次のものが利用できる。
  爪(約2.5) 10円硬貨(約3) 鉄くぎ(約4.5) ガラス(約5.5)
ナイフ(約6) 石英(7) ガラス切り、ダイヤモンド(10)
岩石を乳鉢ですりつぶしたり、やわらかい砂の固まりを指でつぶし、水洗いして顕微鏡で観察する とよい。
 
d.化石の取り扱い
[準備]ハンマー たがね
[留意点・工夫点]
化石の採集
 化石が見つかるのは堆積岩であるが、例外に火成岩、変成岩のこともある。
 石の層理、葉理(ラミナ)に沿って割るのがよい。
 露頭付近の転石の風化した部分が見つけやすい。
 石灰石は風化面に水をかけたほうが見つけやすい。
 石に直接採集場所等を記載しておく。
 他人の土地に勝手に入ったり、露頭を壊したりしない(マナーを守る)。
化石の扱い方
 石を割って化石を見つけた場合、雄型と雌型の両方を採集しておく。
 化石を運搬しにくい場合は、現地で石膏やモデリングコンパウンドを使って型をとることもある。
持ち帰った化石は、小さなたがねを使って周囲の石から剖出することが多い(クリーニング)。剖出する際、同定の決め手となる部分を壊さないように注意する。
標本の整理
岩石は、泥などを落とした後、風化した部分をハンマーで割って取り除き、標本箱に入る大きさにする。
鉱物は、余分な部分を小ハンマーで割り落とし、水で洗ったり、細かい部分は針先で泥を落とす。
化石は、小さなたがねを使って周囲の石から剖出する。
割れたものは接着剤で修理する。
標本箱への整理
 1)ラベルをつけて標本箱に入れて保存する。
 2)標本の隅にラベルの番号を記入した用紙を貼る。
 3)小さな標本やもろくて壊れやすい標本は、詰め物をした管ビンや丸箱に入れる。