28.走性

[目的]刺激源に対して方向性をもって体を移動させる運動を「走性」という。微生物にいろいろな刺激を与え、どのような反応(行動)を示すかを確認する。
[器具・材料]
 試験管 ゴム栓 時計皿 黒紙 アルミホイル 電源装置(乾電池)リード線
ゾウリムシ 酢酸水溶液
[準備および操作]
1)培養液を試験管に入れ、ゴム栓をして立てておく。ゾウリムシの集合状態を確認したら、今度は逆さに立ててしばらく放置する。再度観察する。【走地性】
2)培養液の入った試験管にアルミホイルを巻き光を遮断して(一部開けておく)横に寝かせておく。 しばらくしてから集合状態を観察する。【走光性】
3)アルミホイルをはずし、試験管を寝かせたまま試験管の底の方を氷で冷やす。ゾウリムシの動きを観察する。【温度】
4)培養液を時計皿に取り酢酸水溶液を静かに滴下して観察する。【走化性】
5)培養液に電流を流して観察する。【走電性】
[留意点・工夫点]
  【走地性】
ゾウリムシは(-)の走地性を示し試験管上部に集まるが、餌の分布状態等の要因で上部以外の場所に集まることもある。
試料はゾウリムシの他にアルテミアを使うこともあるが、アルテミアは光の影響をより大きく受けるので注意が必要である。
  【走光性】
試料はゾウリムシの他にミドリムシ(+)ミジンコ(+)アルテミア(+)プラナリア(-)を使うとよい。ボルボックス(+)も分かり易い。
孵化直後のアルテミアは光に向かって移動する。この走光性はきわめて敏感で、光の方向を変えると瞬時に運動方向を変える。非常に分かり易い。
アルテミアは25℃以上・24時間ぐらいで孵化する。かえったものは二日ぐらいで相当数が死んでしまうので、使うたびに卵からかえす方がよい。またかえす卵の数で個体数を調節することができるので便利である。
試験管以外にビンやビーカーを使用した場合、プランクトンは、光がはいってくる上部と明るさが増す底の部分に集まる。
  【温度】
ガラス管などに入れ、一方を氷水、もう一方を熱水に入れるかバーナーの炎で温めると、最も好む温度帯に集まる。
  【走化性】
一般的にゾウリムシを使用するが、ブレファリスマの方がゆっくりした動きなので観察しやす い。
分布状態を肉眼で観察するため、他の走性実験より個体数は多い方がよい。
約0.2%の酢酸水溶液をシャーレの中心に滴下するか、酢酸水溶液を染み込ませたろ紙をシャーレの中心に落とすと、濃度の濃いところは避け、好みの濃度域に輪状に集まるのが観察できる。餌のバクテリア等が生息している濃度(0.02%前後)を好むと思われる。
  【走電性】
ゾウリムシは(-)の走電性を示す。
時計皿やシャーレを使用して3Vぐらいで実験すると肉眼でもわかりやすい。
プランクトンを入れる容器が汚れていると他の要素が影響してうまくいかないことがあるので注意する。
簡単な走電性実験器具を作るとよい。