19. 組織培養

[目的] ニンジンを材料に組織培養を行い、カルスから幼植物を分化させる。
[器具・材料]
 コルクボーラー
MS培地 スクロース 寒天 2・4-D(2・4ジクロロフェノキシ酢酸) 塩酸
水酸化カリウム ニンジン
[準備および操作]
1)培地の調製。
@
MS培地        2.4g
スクロース       15g
寒天           5g
2・4-D(0.1mg/ml) 0.75ml
+ 蒸留水 = 500ml
  
A5%塩酸と1%水酸化カリウム溶液で@の液をpH5.8に調製した後、加熱して寒天を溶かす。培養用試験管に分けて入れ、アルミホイルで口を閉じてオートクレーブに入れ、120℃ 1.2気圧で20分間滅菌する。同時に三角フラスコに蒸留水を入れ、アルミホイルで口を閉じ滅菌水を作っておく。
2)ニンジンの滅菌と植えつけ
@ニンジンを4等分程度に輪切りにし、70%エタノールに数秒間浸した後3%さらし粉溶液に5分間つける。次に滅菌水で充分に洗い流す。
A形成層の部分をコルクボーラーでくり抜きメスで3〜5oの切片にする。
B培養用試験管に植えつけ、20〜25℃の恒温器の中で数週間培養する。
3)カルスの再分化
@カルスを2・4-Dを含まない培地に植えかえ、光をあてて培養するとカルスから根や茎や葉が出て幼植物体が分化する。
Aバーミキュライトに移植する。
[留意点・工夫点]
器具はすべて滅菌する。(150℃で1時間ホイル、新聞紙などで班ごとに隙間なく包む)
作業の際手は70%エタノール綿で拭いて清潔にしておく。アルコールが残っているとアルコールランプの火などで引火するおそれがあるので、少ししてから作業する。
操作は無菌箱内で行う。無菌箱は、水槽を横にしてビニールシートなどで密閉してもできる。実験を行う前に殺菌灯をつけておき、直前に消して、内部を70%エタノールでよく拭く。なお、滅菌灯の光は長時間、目に受けると有害なので注意する。
さらし粉溶液の代わりに次亜塩素酸ナトリウムも使える。
材料として、園芸植物のカトレア、ユリ、カーネーション、ポトス、菊の花びら、ヒラタケなどが利用できる。どの部分からも出来るが、花びらからカルスを作るのは意外性があっておもしろい。
カルスの再分化は、ニンジンに限らず培地の状態、滅菌の有無、カルスの状態などが大きく影響する。
身近な材料を使って、寒天、グラニュー糖とバナナ片で培地を作ってもよい、バナナに適当なホルモンがあるので、50〜75%の成功率でカルスができる。
<参 考>
 オーキシン
  植物の成長を促進する物質。インドール酢酸など植物体内から発見される天然の植物成長ホルモンと同じ作用を示す合成品を含めた総称。
いずれも低濃度で細胞の伸長を促すほか発根、子房の成長促進、側芽の成長抑制、落果・落葉の抑制など種々の作用を示す。合成品にはα―ナフタリン酢酸・β―ナフトキシ酢酸、フェニール酢酸などがあり、単為結果・落果防止などに応用され、2・4-Dは植物の異常形態の形成をおこし、枯死させるので広い葉をもつ草の除草剤として利用されている。