43.陽イオンの分離と確認

[目的]陽イオンの混合溶液(未知試料)から各イオンを系統的に分離し、確認する。
[薬品]Ag+,Cu2+,Fe3+などの混合溶液{硝酸銀AgNO3 硝酸銅(U)Cu(NO3)2 硝酸鉄(V)Fe(NO3)3
塩酸HCl 硫酸H2SO4 硫化水素H2S水 水酸化ナトリウムNaOH アンモニアNH3
硝酸HNO3  ヘキサシアノ鉄(U)酸カリウムK4[Fe(CN)6]
[操作]
 
 
[留意点・工夫点]
加えていく薬品は必要最低限にとどめるように気をつける。
塩酸を加える場合は、1滴ずつ加え、降り混ぜて静置する。沈殿ができなくなるまで繰り返す。量を決めて一度に加えてもよい。
硫化水素水を作る場合は、発生する気体は有毒であるから、キップの装置やふたまた試験管を用い、必ずドラフト内で行う。
ろ紙上の沈殿に洗浄瓶の水を少量かけて、流出液を別の試験管にうける。これを沈殿を水で洗うという。
〈参考〉
陽イオンの分離と確認実験のためのポイント
 含まれる可能性のあるイオン
  Ag+,Pb2+,Cu2+,Al3+,Fe3+,Zn2+,Ba2+,Ca2+,K+,Na+
 
[留意点・工夫点]
@試料は多めに作っておく。試験管は太めのものを使用する。加熱時はビーカーを使用するとよい。
 混合する試料は全て硝酸塩を使用する。
 試料中の各イオン濃度が0.025mol/l前後になるように調整するが、Al3+は沈殿が生じにくいので濃度を2倍にする。最後に確認するBa2+〜Na+も濃いめに調整する。
 未知試料中の混合液の各イオンの濃度の実践例
  
薬品名Ag+PbCuFeAlZnNiCaBaNaLi
モル濃度0.040.060.040.0060.0430.20.021.0飽和の1/30.80.4
A新たな沈殿が生じなくなるまで加える。ろ液は酸性。Ag+はすぐに白色沈殿を生じるが、Pb2+は試験管をよく振ってしばらくおく。または試験管を冷却してもよい。
Bろ紙上の沈殿を洗う。他のイオンを洗い流す。熱湯は同じ液を繰り返して3回くらい注ぐ。
Cキップの装置または、ふたまた試験管を使う。FeSと希HCl(6モル程度)は夏は常温で反応するが、寒くなると反応しにくくなる。キップ装置の場合はFeSを湯の中でしばらく煮沸して暖めて使う。ふたまた試験管の場合は反応が起こるまで暖める。ガラス誘導管は使用ごとによく洗うか、取り替える。ろ液にもう一度ガスを通じて新たな沈殿がなくなるまで充分に通す。
 硝酸で加熱融解する場合、沈殿量が少なければろ紙ごと加える。
D冷ましてからNH3加える。
E煮沸してH2Sを充分に追い出す。酢酸鉛紙で確認する。冷ましてからHNO3やH2O2でFe2+をFe3+にする。リトマス紙でアルカリ性を確認する。
FHClより多いNaOH。
GHClを少しずつ加える。
 Al指示薬としてアルミノンが市販されている。
H冷ましてから(NH4)2CO3を加え、充分振って静止させると沈殿が生じる。
 炭酸アンモニウムの代わりにシュウ酸を加えると、沈殿の粒子が大きくなって分離しやすい。
 市販の炭酸アンモニウムは炭酸水素アンモニウムとカルバミン酸アンモニウムの混合物なので、容器に式量が記載されていない。分析試薬として使用するときは、20gを20mlのアンモニア水に溶かし水を加えて100mlとする。この実験では、この液を約10倍希釈にしたものでも使用できる。
〈参考〉
イオン分析における「属」
 イオンの定性分析を系統的に行うには、適当な薬品を用いて、これらに対する陽イオン の化学的性質の差異を利用して、陽イオンを数個のグル−プに分類する。このグループを「属」といい、操作を分属という。
下記は分属の一例である
 
1属塩酸を加えれば、水銀白し
HCl Pb2+Hg2+Ag+白沈
 
2属硫水通じれば角の水牛ビックリ黙り(鉛)
H2S Cd2+Hg2+Cu2+Bi3+Pb2+
 
3属3価の集まりで、アンモで静まる(ある)黒い
NH3Al3+Cr3+Fe3+
 
4属(士族)集めて子に
Co2+Zn2+Mn2+
 
5属残りはカばかり
Ca2+Sr2+Ba2+
 
6属炎色反応
K+ Na+ Li+