18.コロイド溶液 |
[目的] | 真の溶液とコロイド溶液の違いを知るために、水酸化鉄(V)のコロイド溶液をつくり、その性質(透析・凝析・塩析・チンダル現象・電気泳動)を調べ、コロイドの特性を認識する。 |
[薬品] | 塩化鉄(V)FeCl3 硝酸銀AgNO3 ヘキサシアノ鉄(U)酸カリウムK4[Fe(CN)6] 1%ゼラチン水溶液 1%デンプン水溶液 1%せっけん水 塩化ナトリウムNaCl 硫酸ナトリウムNa2SO4 メチルオレンジ水溶液 |
[器具] | セロハン紙またはセロハンチューブ(ヴィスキングチューブ) レーザー光源装置 U字管 電極 |
[操作] |
1) | コロイド溶液の作り方 |
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2) | 透析の仕方 |
| セロハン紙またはセロハンチューブにコロイド溶液を入れ、ガラス棒などにつるして純水につける。 |
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3) | 特性を調べる |
@ | | 透析後のビーカー内の水を各試験管に取り、硝酸銀水溶液・ヘキサシアノ鉄(U)酸カリウム水溶液・メチルオレンジ水溶液を加えて変化を見る。 |
A | | 透析した水酸化鉄(V)のコロイド溶液を各試験管に取り、硫酸ナトリウム水溶液や塩化ナトリウム水溶液を加えて変化を見る。…凝析 |
B | | 水酸化鉄(V)のコロイド溶液にゼラチン水溶液を加え、さらに硫酸ナトリウム水溶液を加えて変化を見る。…保護コロイド |
C | | コロイド溶液にレーザー光線を当ててみる。…チンダル現象 |
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D | | U字管にコロイド溶液を入れて直流電流を通して変化を見る。…電気泳動 |
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[留意点・工夫点] |
<コロイド溶液の生成> |
☆ | 水酸化鉄(V)…純水を沸騰させながら、塩化鉄(V)水溶液を加えると直ちに赤褐色透明の水酸化鉄(V)のコロイド水溶液ができる。煮沸しすぎると濁ってくる。茶褐色に濁った場合は、水酸化鉄(V)がコロイド粒子より大きくなったためで失敗である。 |
☆ | 塩化鉄(V)は新しく作ったものを使用するのがよいが、作り置きのものを使用する場合は、塩酸を少し加えておくと加水分解を防ぐことができる。また水溶液は、濃度が薄いとできるコロイド粒子が少ないので、濃いめに作る方がよい。 |
☆ | ゼラチン…少量の水にふやかしてから加熱して溶かす。気温が低いと固まるのでその場合は湯せんしてから使う。 |
<透析> |
☆ | 水道水を使うと凝析してしまうので、透析は純水を使用する。 |
★ | セロハン紙は純水で濡らしてから使うと扱いやすい。半透膜でないセロハン紙を使うと透析ができないので注意する。セロハンチューブを使うと漏れないので便利。純水でぬらして口を開き、ロートを使って液を入れる。 |
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<参考1> |
セロハンの半透性の確認 |
KI-I2溶液(薄め)の入ったビーカーの中にデンプン溶液を入れたセロハンを入れ、
デンプン溶液が青く、KI-I2溶液が薄くなることで半透性が確認される。 半透性でないセロハンは、水を通しても柔らかくならない。 |
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<参考2> |
セロハン紙を使った例 | セロハンチューブを使った例 |
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シリコン栓とセロハンチューブを使った例 |
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<チンダル現象> |
☆ | 硫黄のコロイド溶液・せっけん水・コーヒーや薄めた牛乳がよく見える。真の溶液と比較するとよい。 |
☆ | せっけん水は1%より薄くてもよい。時間のたったものは白濁しすぎてチンダル現象が見えにくいので、暖めてから濃度を薄くして使う。 |
☆ | 水酸化鉄(V)のコロイド溶液のチンダル現象は、透析が不充分でもあまり差がないが、作りたての方が見やすい。 |
☆ | コロイド溶液と比較する塩化鉄(V)水溶液は、静置しておいたものをろ過して使用すると、ほこりや不純物が取り除かれチンダル現象が起こらないことが確認しやすい。 |
★ | レーザー光源装置を使うときは、光が目に当たらないように注意する。 |
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<参考3> |
いろいろなコロイド溶液 |
硫黄コロイド…エタノールに硫黄を入れよく振ると硫黄の一部がエタノールに溶ける。しばらく静置してから上澄み液を静かに純水を入れたビーカーに注ぎ込む。ガラス棒で混ぜると白い乳濁液ができる。 その他、泥水・墨汁・せっけん水・コーヒー・牛乳など身近なものでコロイド溶液が存在するので確かめてみよう。 |
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<電気泳動> |
☆ | 電気泳動に使うコロイド溶液は、透析しているビーカーの水が硝酸銀水溶液で白濁しなくなるまで充分透析したものを使う。透析が不充分な溶液は、電気泳動は見られるが陽極よりCl2が発生する。 |
☆ | 硝酸銀は手につけると黒くなるので、取り扱いに注意する。 |
☆ | 何度も実験を繰り返すとビーカーに水酸化鉄(V)がこびりつく。希塩酸を入れて洗うととれる。 |
★ | U字管を使った演示実験の場合の電圧はDC100Vぐらいがよい。 |
★ | 電気泳動を行うU字管は、事前に何回か電流の方向を変えながら流しておくとコロイドが真ん中によって結果がわかりやすい。 |
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<参考4> |
紺青のコロイド溶液の作り方 |
| ヘキサシアノ鉄(U)酸カリウム溶液に塩化鉄(V)溶液を少し加える。 |
|  | U字管に紺青のコロイド溶液を入れて、直流電流を通してみると、紺青のコロイド粒子は、負に帯電しているため陽極側へ移動する。 水酸化鉄(V)のコロイドよりも弱い電圧で帯電する。 |
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★ | 生徒実験に使用する時計皿を載せて固定させる台を発泡スチロールで作成。生徒実験の電気泳動はDC20Vぐらいで両極付近の色の変化を見る。電極の幅を広くし、陽極と陰極の間隔を狭くするとより見やすい。 |
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