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 「緊急事態宣言」解除に伴う開館にあたって



大きな歴史も小さな歴史も



人類は もうどうしようもない老いぼれでしょうか
それとも まだとびきりの若さでしょうか
誰にも 答えられそうにない 問い
ものすべて始まりがあれば終りがある
わたしたちは いまいったいどのあたり?
颯颯の 初夏の風よ

茨木のり子「問い」(『食卓に珈琲の匂い流れ』花神社、1992)



 詩人茨木のり子(1926~2006)さんの沢山の詩の中の一篇。 どういう状況で、こんな「問い」が生まれたのか分かりませんが、 コロナウイルス禍が一段落付いたいま、わたしの心に響くものがあります。


 1995年1月17日の阪神・淡路大震災から2011年の東日本大震災、 2018年の西日本豪雨にいたる災害の多発は、阪神大水害や関東大震災ばかりか、 はるか昔の「貞観地震」をもわたしたちに想い起こさせました。 この度のコロナ禍も、1918年のスペイン風邪はもちろん、 古来、ヨーロッパで流行を繰り返したペスト(黒死病)を想起させています。


 身近な「思いがけない」出来事が、じつは、「大きな」歴史の波として、 地球上に繰り返されていることを教えているようです。 明治維新150年、あるいは父母や祖父母の歴史、といった「小さな」歴史の波長と異なり、 その底流には「大きな」歴史のうねりがある。 それが交差する瞬間、わたしたちは歴史、人類の歴史について考える のではないでしょうか。


 兵庫県立歴史博物館はもちろん、兵庫県という小さな世界の「小さな」歴史を 主題として設立された博物館ですが、歴史博物館である以上、時に「大きな」歴史を テーマとする機会があります。 開館とともにまず、常設展「ひょうごのあゆみ」で小さな歴史を楽しんでいただきますが、 その後、特別展「驚異と怪異-モンスターたちは告げる-」が控えています。 古今東西の大きな歴史から生まれたモンスターたちが登場します。


 小さな歴史も大きな歴史も、ともに楽しんでもらえる博物館として、 スタッフ一同、心を新たにして皆さんのご来館をお待ちしています。 姫路城周辺の深緑も、目に鮮やかです。



令和2(2020)年5月28日
兵庫県立歴史博物館館長 藪田 貫