![]() |
兵庫県立歴史博物館 館長 藪田 貫 |
災害に出会う怖さ 2019年10月15日 |
台風19号によって、関東・東北を中心に大きな被害が生まれています。上陸前から気象庁が「これまでに経験したことのない被害が起きる可能性がある」と、しきりに警告を発していましたが、まさにその通り、前代未聞の大災害となりました。岩手県から長野県に至る範囲、7県で52の河川で堤防が決壊し、洪水が起きるとは、誰が予想できたでしょう。
今後さらに被害状況の確認が進むことで、その規模の増すことが予想されますが、被害に遭われた皆様に心よりお見舞いを申し上げます。
この度の台風は12日(土)に上陸、関東地方には夕方から夜にかけて通過しましたので、恐怖の夜を過ごされた人が多かったと思います。とくに子どもたちにとって、豪雨と大風の恐怖は耐えがたかったのではないでしょうか。わたしにも、半世紀以上も前に遭遇した「伊勢湾台風」の怖さが残っているのです。1959年9月26日、11歳のことです。
台風接近に備え、家中の畳を上げ、縁側の戸障子のすべてにカスガイの様に立て掛け、強風で戸障子が飛ばないようにするのですが、子どもも、その畳を力一杯、支えるのです。支え続けていると、風向きが時刻とともに変わっていくのがわかり、台風が左巻きの渦だということも知りました。深夜近くになると本来なら眠くてしかたがないのですが、怖さが先に立ち、台風が去るまで睡魔に負けることはありませんでした。
結果として自宅は半壊、床下浸水という診断を受ける被害でしたが、今も、その時の恐怖感が蘇ります。この度の台風と大雨、そして洪水に、どれほど子どもたちが恐れおののいたのかを思うと、胸が痛みます。
伊勢湾台風は、1995年1月に阪神・淡路大震災が起きるまで戦後最大の自然災害でした。その後さらに、2011年3月の東日本大震災が起きましたが、その当時、交流のあったドイツ・ケルン大学の日本語学科の学生たちが、被災者を励まそうと作った綿製の手提げバックがあります。親しくしていたフランチェスカ・エームケ教授に頂き、愛用しているものですが、その両面には、学生たちが描いた絵と言葉がプリントされています。
ひとつはStand Up Japan「立ち上がろう日本」ですが、ドイツ語の方は「苦しいとき、傍にいるのが友人だ」という意味だと教えられました。
復興の道筋は長いと思いますが、この思いを、被災された皆様に捧げたいと思います。
|
|