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兵庫県立歴史博物館 館長 藪田 貫 |
新元号を書いてみる 2019年4月15日 |
新元号「令和」の使用開始が近づいてきました。発表に際しては、はじめて国書「万葉集」からの採用、というのがトップネタとして取り扱われました。その後、漢字の形・意味、語感を含め、いろいろと取り沙汰されていますが、普及するに従い、馴染んでいくのは間違いありません。
それよりもわたしは、官房長官が掲げている「令和」という文字が直筆であったことで、一体、「誰が書いたのだろう」と気になったのです。幸い、神戸新聞4月2日朝刊が教えてくれました。内閣府人事課の辞令専門職茂住修身氏(63歳)がその人で、辞令一筋の専門官だそうです。新元号を書く機会はめったになくても、辞令なら、常時、書く機会があるので、専門家がいるのは当然といえば当然。
その書き具合は、国立公文書館が作成・発売しているクリアーファイル「平成」と、なんとなく似ているように見えます(写真1)。
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この新元号「令和」、今後、自分でも書くことがあるだろうと思い、小学生の習字よろしく書き初めをしてみました(写真2)。筆で書くと下手な字でもなんとなく味が出るものですね。
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書といえば、館長室には右から左に「楽以忘憂」と篆書で書かれた額が掛かっています(写真3)。6年前の館長就任時に、関西大学時代の中国人の同僚が、王羲之賞を受賞したばかりの若手書家の作品として寄贈してくれたものです。
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「楽しみを以て憂いを忘れる」と読み、『論語』の一節だと解説がありましたが、なんともいいではありませんか?「憂いなど人生には付きものだが、楽しみで忘れよう」ーと呼びかけるこの精神に乾杯です。
この額を、以前、館長室でご覧になったことのある書家の糸見渓南先生が、昨秋、主宰される潮会の展示会で披露されました(写真4)。
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大きな作品で、墨痕鮮やかに「楽以忘憂」と書かれていました。糸見先生、じつはテレビドラマ「必殺仕事人」のタイトルを書いた書家としてとても高名な方です。
下手であっても書はいいな・・・新元号の発表は、久しぶりに書の妙味を教えてくれたようです。