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兵庫県立歴史博物館 館長 藪田 貫 |
米朝展の余韻 2017年4月15日 |
米朝展、正確には「人間国宝桂米朝とその時代」展が終わり、ほぼ一カ月。担当した中川渉学芸員は、異動で古巣の考古博物館に帰っていきました。館内では、つぎの特別展「ひょうごの美ほとけ―五国を照らす仏像―」展の準備が急ピッチで進んでいます。ところがわたしは、まだ米朝展の余韻に浸っています。というのも、米朝展に寄せられたアンケートをすべて見終わっていないからです。
寄せられたアンケートの数は2220枚。入館者のほぼ1割ですが、これだけの数のアンケートは異例です。みなさん「何か書かなければ」と思われたのでしょう。展示を楽しむだけでなく、展示に応えよう、とされた人の多かったことを物語っています。この二千枚余すべてに目を通したい―という欲のために、まだ米朝展から離れられないのです。二年前の春に異動してきた中川さんに「米朝展をしてみて欲しい」とバリバリ館長特権を発揮した以上、その事業を見届けたい、という思いでもあります。
2200枚のアンケートの語るところによると男性55%、女性45%。年齢では40歳代から70歳代で88%を占め、はじめて来館した人の比率が67%と突出しています。その上で「よかった」29%「たいへんよかった」68%という数字は、学芸員冥利に尽きるでしょう。
ただしアンケートには数値化に馴染まないものもあります。そこで二千枚余のアンケートを、わたしの観点で主題化して整理し、選んでみました。
(1)落語家として
前回午後2時に入館しましたが、時間が足らなくなり再訪しました。生で米朝落語を聞いたのは一度だけですが、品のいい端正な芸風が好きでした。サンケイブリーゼでの展覧会も後になって知り悔しい思いをしたので、大いに期待していました。60代、男性
米朝一門の落語会に行き、落語と出会い半年です。「上方」の落語を楽しむことができるのは、その根底にあるのは米朝さんなのだとつくづく思いました。20代 女性
一門笛の原稿に感動しました。おかしくもあり、ホロリともなり、それでいて、キチントと教示がある。40代 男性
米朝さんの高座をナマで見られなかったので、アンドロイドで見られて感激。30代 女性
(2)米朝一門
出口から出てきたところの一門の皆さんの手書き色紙一枚一枚読んでいて、皆さんが同じ思いを感じておられ、感動しました。40代 男性
(3)人生
生い立ちや入門前の展示が特によかった 30代 女性
米朝さんの笑顔は最高でした。50代 女性
人間桂米朝の人となりがよくわかる展示でした。60代 女性
米朝師匠の一生を細かくすべてを網羅してあり、見応え十分でした。50代 男性
米朝さんを思い出して涙が出ました。60代 男性
一周忌に米朝さんのことをたくさん知れて、お墓参りもできてよかった。ステキでした。30代 女性
(4)息子の展示
渉さんがいなければ一門以外見せていただけない貴重な品々をありがとうございます。60代 女性
ボリューム満点の展示で、ご子息だからこそ書ける説明内容だと大変満足した。30代 女性
(5)自分の人生と
45年前、受験勉強中深夜ラジオから流れていた地獄八景に衝撃を受け、聞き惚れた日々のことを思い出します。60代 女性
亡き父と同い年、父も亡くなり10年。その思い出とともに見せていただきました。50代 女性
(6)姫路と
米朝さんのお墓も姫路に作られて誇らしい気持ちです。落語会もずっと姫路で続けて下さってありがとうございます。50代 女性
戦中・戦後の写真を見て感無量。自分も姫路中学出身です。80代 男性
(7)展示
米朝さんファンになったのは昭和53年くらい。それ以前のことはあまり知らず、この特別展を拝見して本当によかった。しばらくは米朝さんに酔います。60代 女性
まったく知らんかったけど、とても楽しかった。高校生
姫路での「上方はなしを聴く会」パンフレットに20歳代の情熱が籠っていて心が震えた。40代 男性
(8)希望
記念遺品が今後、どのように保存されるのか、記念館のようなものができるのか、心配です。50代 男性
小規模でもいいので姫路ゆかりの米朝師匠の常設展を残して頂きたいです。50代 男性
今回はふだんの倍の紙面になりましたが、お許し下さい。
写真は2月11日、桂ざこば師匠の動楽亭で記者発表をした折の関係者一同です。
「人間国宝桂米朝とその時代」展のご支援に篤く御礼申し上げます。
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