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兵庫県立歴史博物館 館長 藪田 貫
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アメリカ人夫妻の見た「歴史をいろどる群像」展 2016年5月15日 |
先月23日から特別企画展「歴史をいろどる群像」展が始まりました。「館蔵コレクションにみる」という副題が付けられているように、昭和58年(1983)4月の開館以来、本館が収集に努め、また寄贈を受けたりして架蔵されるようになった収蔵品が約80点、展示されています。
入れば一目瞭然、織田信長などの人物図、源平合戦などの合戦図、東海道などの名所図、年中行事絵巻など、大小の絵画作品が開陳され、まるで歴史美術館に入り込んだ気がします。しかも、ほとんどが日本の歴史上、著名な人物とシーンなので、馴染みの日本歴史を、<もう一度学ぶ>雰囲気が醸し出されています。
しかし一方、信長も武蔵も知らない外国のツーリストが見たらどうなるでしょうか?(写真1)たまたま先日、ギャラリーの出口で、アメリカ人の老夫婦(夫は1956年、朝鮮戦争の時に軍人として日本に滞在したという経歴)に「おまえは英語が話せるのか?」と声をかけられ、一巡してきた二人にあらためて解説をすることとなりました。展示数の多さとカラフルさに驚いた彼らにまず、館の長年のコレクションであることを述べ、つぎに、掛軸hanging scroll 、巻物 rolling picture scroll、屏風folding screen という美術品の形式の違い、それぞれの使用目的・使用空間について説明しました。
どの程度正確か自信はありませんが、信長はじめ個々の人物について門外漢なアメリカ人にとっては、理解しやすかったようです。肖像画が、先祖供養の場に掛けられるという説明には、「さすがに日本は歴史が古い。わたしたちには写真しかない」という返事が返ってきました。
そんな二人に一押しの作品として紹介したのは、アイヌの首長イコトイの肖像でした(写真2)。「これは日本のアボリジーニだ」というと、夫人の口から即座に「アイヌ」という言葉が出てきましたが、アメリカ滞在中の1999年秋にワシントンのナショナルギャラリーで開催されていた「大アイヌ展」を思い返し、納得した次第です。
写真1 ギャラリー入口の信長・武蔵と撮影コーナー
写真2 イコトイ像
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