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兵庫県立歴史博物館 館長 藪田 貫
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猪名川町で茅葺きを見る 2015年7月15日 |
カレンダーが7月に変わりましたが、館内の「みんなの家」では、恒例の茅の輪くぐりが立てられています。夏越しの行事として各地の神社で復活・定着してきた行事ですが、カヤが選ばれるのは、背丈の長い素材とともに、川辺に茂る生命力の強さに人々が惹かれたからではないでしょうか?
「「カヤといっても結局、ススキですよ」とは、猪名川町の古民家で五月の連休中に行われた茅葺きを取り仕切る職人さんの弁です。昨年度から文化庁の支援を得て行っている「文化遺産を活かした地域活用化事業」のお陰で、はじめて、その現場に立ち会うことができました。
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この事業は猪名川町域を対象に、多田院御家人の由緒をもつ旧家を訪ね、関係資料を調査するというものですが、町内指折りの旧家に出向いた折、近々、茅葺き替えをすると教えていただき、晴天の日にお邪魔した次第です。
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葺き替えはブロックを決めて、数年前から進められており、今年で最終。葺き替え箇所には足場が組まれ、屋根のテッペンに届いています。「上がっていい」という許可を頂き、恐る恐る上がったのですが、屋根の急勾配に足がすくみます。さらにそこで驚いたのは、葺き替えの済んだ母屋二階の穴から、次々と茅の束が出てくること。聞けば、葺き替えには数年前から茅場で刈り取って乾燥保存した茅を使うのだとか。自然相手の作業には、それだけの時間が必要なのか・・慌ただしい生活を戒められるように聞こえました。
水面に美しい影を落とす古民家は、姫路城とはひと味違う日本の美しいすがたです。