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兵庫県立歴史博物館 館長 藪田 貫
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フィギュアが結ぶ日本とヨーロッパ 2015年5月15日 |
開催中の特別展<美似>the Nipponー海洋堂のミニチュアコレクションーへの来館者が、1万人に迫ろうとしています。時折、会場を見て回るのですが、かがみ込んで写真を撮る人の姿が見受けられます。「ストロボやフラッシュを使わない」というルールを守ってもらえれば、お気に入りのフィギュアの写真を撮ってもいいという、ふだんの博物館では考えられないサービスを喜んでもらっているようです。携帯やスマホですぐに写真が撮れる時代なので、みなさんに、それぞれ「お気に入り」の写真を撮って帰ってもらえれば、主催者として、これに過ぎる喜びはありません。
観覧者を惹き付けるフィギュアですが、この度の展示では、単体のフィギュアと並んで、ジオラマも展示されています。「初秋の漁村」にはわびしさを、「八百屋の店先」には賑わいを感じさせ、単体のフィギュアとはひと味違った魅力があります。情景である分、時間と空間を超えて、江戸時代の村や町の雰囲気を感じることができるからでしょう。
こんなジオラマの効果を狙って日本のある街の模型が作られ、はるかヨーロッパに渡っています。かつて滞在中にオランダのライデン国立民族学博物館で目にしたのです。それは長崎出島の模型で、オランダ商館長ブロムホフがオランダ東インド会社の指示で作らせ、1820年、ハーグの王立骨董陳列室(現マウリッツハウス)のコレクションとなりました(のちにライデン国立民族学博物館に移管)。模型は水門や船頭部屋、乙名詰所などからなる出島全体の建物群で、ひとつひとつ並べると扇型のミニ出島が復元されるというものです。長崎に行けば国史跡出島の一画にも復元があります(写真1)が、オランダ国王や市民は、遠く離れた異国での暮らしを、この模型を通じて思い描いたことでしょう。
ブロムホフのこの模型、近年、完成を見た出島和蘭商館跡復元に際し、主要な資料として活用されたのです(写真2)。たかがミニチュア、されどミニチュアです。
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