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館長室へようこそ!

兵庫県立歴史博物館
館長 藪田 貫
【プロフィール】
 2014年4月1日に、端信行前館長の後任として歴史博物館長に就任しました藪田 貫です。端館長とは年齢は違いますが、大阪生まれ、京都橘女子大学教授を勤めたことなど共通点があり、初対面の時に話が盛り上りました。
 専門は歴史学、とくに日本近世史(江戸時代史)の社会史・女性史です。大阪大学大学院修士課程を終え、大阪大学助手・京都橘女子大学助教授を経て、1990年から関西大学文学部教授を勤めており、今年1年は、館長との兼務となります。
【「館長室へようこそ」について】
 「館長室へようこそ」では、歴史博物館に関する話題や、兵庫県の歴史・文化のニュース、私が折に触れて感じたことなどを、皆さんにお伝えしたいと思っています。「歴史ステーション」にお越しになった時に、気楽に立ち寄って、おくつろぎ下さい。  みなさんのお便りなども、お待ちしています。
あて先 : Rekishihakubutsu@pref.hyogo.lg.jp
 

  「災害と歴史遺産」展の語るもの  2015年2月1日

 阪神・淡路大震災20年の1月17日(土)朝、午前7時頃、自宅近くの停留所でバスを待っていると、雲の間から大きな丸い太陽が顔を出しました。即興で「震災日 昇る太陽 いとおしく」という句が浮かびました。忘れられない朝を、思い出させてくれた太陽でした。

 わたしたちのレキハクでは、今、「災害と歴史遺産」展を開催しています。「被災文化財等レスキュー活動の20年」という副題の示すように、地震・津波・台風・洪水などの災害から貴重な文化財を救出してきた歴史が、展示されています。前半は東日本、とくに陸前高田市の事例、後半は兵庫県域の事例が扱われているのですが、陳列されているのは、仏像、土器、刀から、絵図、古文書、水車、昆虫標本にいたる多様なモノで、一瞬、何の展示なのかと驚きます。通常の見慣れた展示、つまりテーマを決めて、絵画なら絵画、古文書なら古文書が並んでいるという美術館・博物館の常識とかけ離れているからです。

 その理由は、ほかでもありません。陸前高田市立博物館がまるごと、震災と津波の被害に遭ったと事件ことに由来します。同様に、尼崎市や佐用町の旧家が、まるごと被害を受けると、木のモノも、金物も、紙のモノも、泥と汚水にまみれることとなります。その時、「もう駄目だから捨てよう」とゴミ扱いされていれば、今回の展示は生まれていません。「貴重な文化財・歴史遺産だから残そう」と判断したときに、はじめてレスキューとなるのです。人の命の尊さは、誰もが知っています。命についで、文化財という大事なモノがあると人々に認識されることで、文化財レスキューが生まれたのです。その始まりは、1995年1月の阪神・淡路大震災でした。

 20年の歳月を思い返しながら、ひとつひとつの展示物に見入りました。

   
 
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