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兵庫県立歴史博物館 館長 藪田 貫
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世界に一つ:ガラスの姫路城 2015年1月15日 |
松の内も明け、1月半ばとなりましたが、皆様、恙なく新年をお迎えのことと存じます。
それにしても、正月はいいものですね。365日のうちのたった一日ですが、世界中の人々が、幸多かれと、それぞれの言葉で祝福し合います。日本語では「新年おめでとう」とめでたさを言祝ぎ、英語ではHappy New Yearとハッピーな気分を伝え、ハングルでは「たくさんの福があるように」と相手の幸運を祈ります。どこにも否定的なイメージが存在しません。現実には、さまざまな困難が一杯有るにもかかわらず、この日ばかりは、すべてがいい方向に向かう、そんな機運が正月とともにやってくる―という含意が込められているのでしょう。
さてその目出度さですが、今年は、修復成ったばかりの白い姫路城とともに言祝ぎたいと思います。3月27日には待ちに待った一般公開が始まりますが、わたしたちの兵庫県立歴史博物館内ロビーにあるガラスの姫路城も見ていただきたいと思います。サイズは幅1.80メートル、奥行1.10メートル、高さ0.75メートル。すべてガラスで出来ているのですが、面白いことに至る所にヒビが入っています。割れているのに、ガラス細工として成形されているという不思議なお城です。作者は大野貢氏(1926〜1999)、日米の歴史的建造物のガラス細工で著名な芸術家です。この姫路城、平成4(1992)年12月、天皇・皇后両陛下に献上された逸品で、翌5年6月、両陛下から歴史博物館に下賜されたものです。
作者の大野氏は、雑誌『文藝春秋』1993年11月号に寄せた一文で、制作の苦心談を綴ったあとこう結んでいます。「どうぞ姫路城を見学の折には、隣の歴史博物館にお立ち寄りくださってガラスの姫路城を見てやって下さい」。
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