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兵庫県立歴史博物館 館長 藪田 貫
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特別展「播磨と本願寺」 2014年11月1日 |
博物館傍に立つ大きな栴檀の葉が、黄色く色づきはじめました。特別展「播磨と本願寺」が佳境を迎えています。9月27日(土)に開会、翌28日に大谷大学草野顕之学長を招いた講演会には、会場ホールと隣のセミナー室まで満席、という博物館の歴史に残る数の聴衆を迎えました。この展示にかける期待の大きさの現れでしょう。
正面入り口に鎮座する阿弥陀立像に合掌して入り、展示を見終わって思い出した光景があります。10年ほど前、大阪・天王寺の大阪市立美術館で開催された特別展「祈りの道〜吉野・熊野・高野の名宝」で、館内に熊野速玉大社のご神像などがドーンと陳列されていたのです。まるで神社仏閣に迷い込んだような感覚を、博物館の中で味わったのでした。
近年、博物館での寺院の展示が増えている気がします。今年も7月に奈良国立博物館で特別展「国宝 醍醐寺のすべて」が開催され、大津市歴史博物館では円珍生誕1200年記念企画展「三井寺 仏像の美」が開催中です(※1)。また四国四県では、八十八カ所巡礼と札所寺院の展覧展が、高知県を皮切りに順次展示されています(※2)。そしてレキハクの「播磨と本願寺」展(※3)。期せずして、ひとつの潮流となっている感のするこの動きの背景には、わたしたちの日々の暮らしと宗教・寺院との関わり方の変化があるように思えます。
その一方、特別展「播磨と本願寺」には、本館の長年にわたる調査・研究活動の成果があるのを忘れてはなりません。そもそも、このような展示ができるという確信は、県内各寺院への調査活動を抜きにして芽生えるものではありません。また、寺院との信頼関係の醸成なしに、寺宝が出陳されることもあり得ません。図録によれば、出品に協力した寺院・神社は県内外で55に上ります。展示を見ていて湧いてくるのは、よくこれだけの寺宝を集められたな、という感想です。ぜひ、みずから体感してもらいたいと思います。
【編集者注】
※1 円珍生誕1200年記念企画展「三井寺 仏像の美」、大津市歴史博物館、10月11日〜11月24日。
※2 「空海の足音 四国へんろ展《高知編》」、高知県立美術館、8月23日〜9月23日。「同《愛媛編》」、愛媛県立美術館、9月6日〜10月13日。「同《香川編》」、香川県立ミュージアム、10月18日〜11月24日。「同《徳島編》」、徳島県立博物館、10月25日〜11月30日。
※3 特別展「播磨と本願寺〜親鸞・蓮如と念仏の世界 〜」、兵庫県立歴史博物館、9月27日〜11月30日(絶賛開催中です!)。