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兵庫県立歴史博物館 館長 藪田 貫
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少女雑誌パラダイス 2014年9月15日 |
8月末に企画展「こどもの科学」が終わりました。2階のギャラリーは、再び、静かな時を送ります。しかし1階ロビーでは、官兵衛再登場!?と驚かされるほど、肖像画にそっくりの官兵衛人形が展示され、見学者を迎えています。歩野香(ほのか)の会の主催です。
また奥の歴史工房では、コの字型の陳列コーナーを四分して、ミニ展示が行われていますが、その一部が先月、展示替えされ、「少女雑誌パラダイス」が新登場しました。江戸の女性史に関心のあるわたしも早速、一見。冒頭に「少女双六」が展示されており、釘付けになりました。その理由は、かつて江戸東京博物館所蔵の「新版庭訓娘双六」(1842年)を調査して、『女のいない世の中なんて』という小冊子を著したからです。
「江戸版双六」の振り出しは小娘で、ゴールは万福長者極楽隠居。その間に、おてんば娘・花嫁・飯盛女・お召遣いなど複数の女性が配されています。予想されるコースは振り出し⇒花嫁⇒ご新造を経てゴールに至るというものですが、それとは別に、振り出しから「お召遣い」を経て、ゴールに飛ぶウルトラCが用意されているのがミソ。ウルトラCに飛べるのは、江戸城大奥という近道があるからだ、というのがわたしの読みです。
それに対し、少女雑誌『少女世界』付録の双六は、振り出しに<生誕>を置き、ゴールに<花嫁>を据えるものですが、振り出しからゴールまで、貧富・都鄙の差があからさまに語られているのが特徴です。病院で生まれた女子は尋常高等小学校入学⇒女学校入学を経てゴールへ、自宅で生まれた子は小学校入学⇒女中奉公をへてゴールというように。
1908年当時、世の中は近代階級社会の只中にありました。