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館長室へようこそ!

兵庫県立歴史博物館
館長 藪田 貫
【プロフィール】
 2014年4月1日に、端信行前館長の後任として歴史博物館長に就任しました藪田 貫です。端館長とは年齢は違いますが、大阪生まれ、京都橘女子大学教授を勤めたことなど共通点があり、初対面の時に話が盛り上りました。
 専門は歴史学、とくに日本近世史(江戸時代史)の社会史・女性史です。大阪大学大学院修士課程を終え、大阪大学助手・京都橘女子大学助教授を経て、1990年から関西大学文学部教授を勤めており、今年1年は、館長との兼務となります。
【「館長室へようこそ」について】
 「館長室へようこそ」では、歴史博物館に関する話題や、兵庫県の歴史・文化のニュース、私が折に触れて感じたことなどを、皆さんにお伝えしたいと思っています。「歴史ステーション」にお越しになった時に、気楽に立ち寄って、おくつろぎ下さい。  みなさんのお便りなども、お待ちしています。
あて先 : Rekishihakubutsu@pref.hyogo.lg.jp
 

  少女雑誌パラダイス  2014年9月15日

 8月末に企画展「こどもの科学」が終わりました。2階のギャラリーは、再び、静かな時を送ります。しかし1階ロビーでは、官兵衛再登場!?と驚かされるほど、肖像画にそっくりの官兵衛人形が展示され、見学者を迎えています。歩野香(ほのか)の会の主催です。

 また奥の歴史工房では、コの字型の陳列コーナーを四分して、ミニ展示が行われていますが、その一部が先月、展示替えされ、「少女雑誌パラダイス」が新登場しました。江戸の女性史に関心のあるわたしも早速、一見。冒頭に「少女双六」が展示されており、釘付けになりました。その理由は、かつて江戸東京博物館所蔵の「新版庭訓娘双六」(1842年)を調査して、『女のいない世の中なんて』という小冊子を著したからです。

 「江戸版双六」の振り出しは小娘で、ゴールは万福長者極楽隠居。その間に、おてんば娘・花嫁・飯盛女・お召遣いなど複数の女性が配されています。予想されるコースは振り出し⇒花嫁⇒ご新造を経てゴールに至るというものですが、それとは別に、振り出しから「お召遣い」を経て、ゴールに飛ぶウルトラCが用意されているのがミソ。ウルトラCに飛べるのは、江戸城大奥という近道があるからだ、というのがわたしの読みです。

 それに対し、少女雑誌『少女世界』付録の双六は、振り出しに<生誕>を置き、ゴールに<花嫁>を据えるものですが、振り出しからゴールまで、貧富・都鄙の差があからさまに語られているのが特徴です。病院で生まれた女子は尋常高等小学校入学⇒女学校入学を経てゴールへ、自宅で生まれた子は小学校入学⇒女中奉公をへてゴールというように。

 1908年当時、世の中は近代階級社会の只中にありました。

   
 
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