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兵庫県立歴史博物館 館長 藪田 貫
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博物館での「一夏の経験」 2014年9月1日 |
夏空の戻った8月後半、恒例の博物館実習がありました。大学で博物館学芸員課程を修得している学生を迎えて、4日間、実習を行うもので、今年は、神戸大学・神戸女子大学・神戸学院大学・関西学院大学の4大学から11名が参加しました。
常々、教職実習と博物館実習は、社会に出る前の学生にとってたいへん大きな意義があると感じています。教育実習は6月で終わったところが多いと思いますが、3週間、母校を中心に実習をこなしてきた学生と会うと、まるで別人のように成長していました。多忙な教育現場の貴重な時間を割いて実施してもらっている効果は間違いなくあると確信します。その一方、卒業後、教師になるかと聞くと、答えは半々です。厳しい教育現場を体験して、自分には向いていないと感じる学生も少なくありません。それもまた、教育実習の効果だと思います。
それに比べると博物館学芸員課程を修得する学生は多くありませんが、その分、意欲は高いものがあります。今年の実習生のなかには、姫路城の傍のレキハクで実習したいと思って参加した学生もいました。実習は、博物館で働くには必須の資格ですが、それ以前に、歴史・民俗・写真・彫刻・考古・美術などの諸資料に触れる、博物館の裏側を見る、という経験だけでも価値があると思うのですが。
そういえば6月に、トライ・やるウイークで地元の中学生たちを受け入れました。「熊野曼荼羅」の絵解きに挑戦するなど、ふだん学校でできない経験をし、その後、実習記録を手作りの瓦版にして館に届けてくれました(ロビーに掲示してあります)。将来、その仕事に就くかどうかは別として、若い世代が、はやりのUSJだけでなく博物館で「一夏の経験」をしてくれることは大歓迎です。