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兵庫県立歴史博物館 館長 藪田 貫
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新館長就任挨拶回りを終えて 2014年7月1日 |
館長就任後の用務として、日頃、協力してもらっている企業・組織への挨拶回りがあります。なかば覚悟し、なかば意外な出会いに期待して、事務局が設定したスケジュールに従って三ヶ月、ほぼ回り終えた感があります。4月1日に用意された200枚の名刺がほぼ無くなっているので、それくらい大勢の人にご挨拶申し上げたのだと思います。そんな挨拶回りの中でいくつか、強く印象に残る出会いがありました。
4月はじめに訪れた姫路信用金庫では、社長室前の廊下に据えられた初代社長の銅像が印象的でした。創業者の理念や覚悟を社員や来館者に伝える―というメッセージを受け取りましたが、ヤマサ蒲鉾や佐和鍍金工業・ヤマトヤシキなど、先代の興した事業を受け継いで奮闘している若い社長さんたちの発言にも、強い覚悟を感じました。
ヤマサ蒲鉾では、ちょうど芝桜の咲く季節であったので、その立地の美しさに目を奪われました。「人は美しいモノを見ると幸せになる」という先代の考えから始めたとの話も、耳に残りました。この一言に、食物を扱う企業者の人間観が表れているとすれば、応接中に抹茶と煎茶の接待を受けたヒガシマル醤油では、日本文化に対する姿勢を感じました。
5月終わりに伺った御座候では、都会の中の小さな森と清水公照師の書に迎えられました。一方、西松屋では、姫路城を描いた大きな額に見送られましたが、それぞれの企業の背景に、姫路の生み出した歴史と文化が根付いていると思った次第です。
二度とないのが新任挨拶ですが、もう一度訪ねてみたい、と思わせる企業者に出会えたのは幸せでした。