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兵庫県立歴史博物館 館長 藪田 貫
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姫路城と熊本城 2014年6月15日 |
5月末に熊本に行く機会がありました。新幹線さくらが熊本駅に入る手前で一瞬、黒い天守台が見えました。その後、JR熊本駅から市電に乗り、旧市街に入ると城は大きくなり、地元のデパート鶴屋前の通町筋に降り立ち振り返ると、大きな熊本城が目に飛び込んできます。加藤清正の築城した石垣が急峻で、下から見るとかなりの威圧感があります。姫路城の<白>に対し、熊本城は<黒>という印象です。
今回の熊本行きは、熊本大学文学部附属永青文庫研究センター主催で昨年11月に開催されたシンポジウム「日本近世の領国地域社会―熊本藩政改革を焦点に―」の総括と出版に向けた打ち合わせが目的でした。永青文庫研究センターとは、旧制五高を継承した熊本大学が、国や県などの資金を得て平成21年4月に設立したものですが、研究資源は、旧藩主細川家が残した九万点に及ぶ資料群です。現在、公益財団法人永青文庫が所蔵する歴史資料(古文書など)は約四万数千点、それが熊本大学附属図書館に一括して寄託されています。そのなかには織田信長の細川幽斎宛書簡など、重要文化財級の史料がゴロゴロあり、戦国から江戸時代を研究する者にとってはヨダレが出そうな宝物です。ほかにも剣豪宮本武蔵の墨画、細川家伝来の刀剣・陶磁器などの文化財が数万点あり、それらは適宜、城内の県立美術館で展示されています。
城が城だけでなく、城の主であった歴代藩主の各種資料・文化財とともにある――それが熊本城の魅力だと感じる旅でした。