兵庫県立歴史博物館 館長 藪田 貫
|
歴史博物館と姫路城4 2014年6月1日 |
博物館から素屋根を解体するクレーンの脇に、五層六階の大天守の全貌が見わたせるようになりました。初夏の日差しのもとでは、白すぎて眩しいほどです。全身、素屋根に覆われていた頃から見ると隔世の感がし、同時に、こんな貴重な変貌を間近に見られる幸運に感謝したいと思います。
さて、桜・ツツジをへて、菖蒲の季節となりました。菖蒲となれば水辺ということで、菖蒲を求めて「千姫の小径」を歩きました。「千姫の小径」とは、姫路城の北西、清水橋から国道二号線傍の埋門にかけて、中壕と船場川の間を南北に通じる小道で、途中には、船場川の対岸に千姫像があります。右手に船場川の清流、左手に澱んだ中壕を眺めながら歩いて行くと、堀の中に菖蒲の群落が見えてきます。天を衝くように茎を伸ばし、青く咲いている姿は、「いずれが菖蒲か杜若」とされる凜々しさを秘めています。視線の先には中壕の石垣がズーッと続いており、大天守や櫓とはひと味違う城郭建築の魅力が堪能できます。
人の通りも少なく、心身の疲れた時にこの道を歩けば、癒やされること請け合いです。