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兵庫県立歴史博物館 館長 藪田 貫
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歴史博物館と姫路城 2 2014年4月29日 |
桜が散り、姫山公園の緑が濃くなってきました。館内二階の食堂「はりまっ子」から見下ろす景色は、「緑陰幽草、花時に勝る」がピッタリです。徐々に姿を現す天守閣の白と、木々の緑のコントラストが日ごとに鮮やかになっています。
特別展「軍師官兵衛」が後期展示に変わったので、たくさんの観覧者と一緒にあらためて見学しました。官兵衛孝高の人生を辿る形で構成されている展示の中でも、とくに私の印象に残るのは二つの文書です。ひとつは官兵衛が荒木村重の下で幽閉されている時に、家臣たちが交わした起請文、もうひとつは秀吉の怒りを買った官兵衛が、嫡男長政に宛てた書置。どちらも黒田家存亡の危機に直面した時のものだけに、文書には緊張感が漂っています。起請文の宛先が「ご本丸様」つまり正室光であるのも、主人(孝高)と嫡男(長政)が揃って不在という異常事態を物語ります。また書置には末尾に、孝高から長政に与えられた文書が、さらに忠之に与えられる旨が注記され、孝高・長政父子の直筆が認められます。「書は人なり」と言いますが、この書置は実に味わい深い逸品です。