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兵庫県立歴史博物館 館長 端 信行
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災害列島の多難な夏に 2012年7月15日 |
この原稿を書いている13日は、昨日から引き続き、九州地方の大雨災害のニュースが朝からひっきりなしにテレビで流されている。1時間に100ミリを超すという昨日来の大雨を、メディアは「経験したことのない豪雨」と表現している。山崩れや土石流が人家を埋め、突然の鉄砲水が堤防をあふれ出し、街区を孤立させる。何とも傷ましく、昨年の大震災や大津波災害のダメージ症候群からなかなか抜け出せない。
日本の河川は昔から鉄砲水が特徴で、それゆえに堤防構築をはじめ土木は国づくり地域づくりの礎であった。信玄堤からコンクリートに替わっても、その精神はおなじであるはずであるが、いまもってこうした災害が多発するのは、地球の気候変化の方が人の営みを超えて進行しているのであろうか。「想定外」とか「経験したことのない豪雨」が多用されるのは、人の営みの評価を避けているように思えて仕方がない。
くわえてこの夏もまた‘節電の季節’である。兵庫県では、博物館や美術館を「クール・スポット」に指定し入場料を半額にし、節電の夏には自宅にこもらず、家族で「クール・スポット」で過ごし、各家庭の節電の効果を上げようという運動をはじめた。当館ももちろん「クール・スポット」である。そしてこの夏は『江戸時代のペーパークラフト』の展覧会だ。印刷された絵を切り抜いて組み上げると、有名な建物やお芝居の名場面などがたちまちできあがるしかけだ。材料は紙だけだから本当に省エネだ。この夏は「クール・スポットれきはく」で、環境に優しい組み上げ絵づくりに親子で熱中してはいかが。