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兵庫県立歴史博物館 館長 端 信行
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祈りの春 2012年3月15日 |
3月にはいってこの一週間、新聞やテレビは東日本大震災一周年の報道で埋めつくされた感があった。各紙各局は、それぞれに工夫をこらし、さまざまな記事や映像をおくりつづけた。そして3月11日を迎えた。各地で犠牲者への追悼の祈りがささげされた。あまりにも大きなそのドキュメントのかずかずに、背負っているわけでもないのに背なかが重くなってくる。
昨年から復興の合い言葉になりつつある“絆”に焦点を合わせた報道が多かったので、ミュージアムや文化財をとりあげたものが少なかったように思われた。ミュージアムの力がまだまだ十分でないことを示しているのかもしれない。これまで以上に、地域の活力となるミュージアムの活動をめざさなければならないとの思いをつよくした。
いま館内では、4月からはじまる春季特別展の準備がたけなわである。テーマは、祈りの春にふさわしい、兵庫随一の文化財である『国宝 鶴林寺太子堂』である。太子堂建立から九百年目にあたる本年を記念して、鶴林寺の貴重な寺宝や美術品のかずかずを展示する計画である。ご期待ください。