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兵庫県立歴史博物館 館長 端 信行
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春、待ちのぞむ 2012年2月15日 |
新聞やテレビの報道によると、ヨーロッパでもたいへんな寒波のようで、わが国でも日本海側の多雪地方は例年にない大雪に見舞われている。もう暦のうえでは立春も過ぎたというのに、まだまだ寒さとのたたかいがつづくようである。
昨年の東日本大震災から早くも一年がたとうとしている。あとひと月ほどで、大震災の一周年を迎える。肉親や住まいや仕事場や賑わったまちすらも奪いさった、あの巨大津浪の残影は消えることがない。仮設住宅での生活にも寒波が襲っているという。春を待ちのぞむ気持ちは、被災者の人びとの悲痛な叫びとして聞こえてきそうだ。
東京電力の原子炉事故は、わたしたちの放射能への関心を一挙に高めたが、いまだに明確なことがわからない。広島や長崎の被爆体験がありながらも、なおこの不明瞭な事態はどういうことなのだろうか。明確な現状分析から未来へのビジョンづくりが大きな課題となっている。
3月11日の東日本大震災から一周年を機に、日本の未来に向けた“春”がおとずれることを期待したい。