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兵庫県立歴史博物館 館長 端 信行
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京極夏彦氏に学ぶ 2009年5月15日 |
当館では、いま春季の特別展『妖怪天国ニッポンー絵巻からマンガまでー』(6月14日まで)を開催中である。さいわい観覧者の出足はよく、あいだにゴールデンウィークをはさんだとはいえ、開幕から2週間ばかりの5月10日の午前には1万人に達し、ちょうどトークショウのために来館中であった京極夏彦氏から記念品を贈呈するセレモニーを行うことができた。
その京極氏には、その日の午後に当館主催のトークショウに出演いただいた。会場は定員300名ということだったが、申し込みは800通を超え、参加者は抽選させていただいたが、参加者の8割以上が女性で占められていた。会場は終始なごやかで、最後まで席を立つ人もなく、参加者にはさぞ満足度の高いイベントであったと言えよう。
もちろんこうしたイベントが成り立つのも、関心の強い人びとの集まりであったから当然とは言えるが、わたしは京極氏の読者(イベントでは聴講者)に対する姿勢に大いにこころを打たれた。まず衣装がいい。萌葱色の和服に茶羽織、足袋に下駄、髪型も長髪だが計算されたように(計算されている)やや顔面にかかっている。ご講演のなかで、小説を通じてエンタテイメントを読者に提供していると自ら述べられていたが、読者を楽しませる気持ちが全身に溢れている。2時間にわたるご講演のあとも、小1時間にわたってサイン会を行われた。顧客に対するサービスとはどういうことかを学んだ一日だった。