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兵庫県立歴史博物館 館長 端 信行
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「民俗芸能大会」に思う 2008年11月15日 |
当館では、いま特別展「ふるさとの神々―祝祭空間と伝統の美」を開催中です。この展覧会は、兵庫県神社庁、神戸新聞社との共催で、兵庫県下の著名な神社が所有する宝物や献上品、御輿など貴重な文化財の数かずを、本邦初公開の絵馬や国立博物館からの里帰りの品々を含めて170点ほどを展示しています。
また、さる11月3日「文化の日」に、この特別展の関連行事として「兵庫県民俗芸能大会」を姫路市民ホールで開催しました。この大会では、兵庫県下、7つの団体の公演がありました。兵庫県は面積が広いだけあって、県下各地の神社に素晴らしい芸能が保存されていますが、当日は、出演された保存会の皆さんのいずれ劣らぬ大変な熱演ぶりで、会場は大いに盛り上がったことでした。
この「民俗芸能大会」を観てもっとも印象に残ったのは、いずれの芸能公演も若い世代の青年や子どもたちが活躍していることでした。こうした神事にまつわる芸能は、博物館で展示しているモノとしての文化財を有形文化財と呼ぶのに対して、無形文化財と呼んでいます。この無形文化財では、人から人へと芸が伝承されなければ意味がないわけです。有形文化財の保存はある程度物理的にできますが、無形文化財の保存は人が保存の主体であり、それも世代を通じての保存つまり伝承がなければならないのです。
文化財と一口に言うけれども、その保存と伝承には、地域の人びとのたゆまない努力と情熱の歴史が秘められているのです。博物館もこれまで以上に、地域の文化の保存と伝承のお手伝いをしなければいけないと思った次第です。