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兵庫県立歴史博物館 館長 端 信行
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‘記憶’を楽しむ博物館 2008年5月15日 |
県立歴史博物館のネットミュージアム「歴史ステーション」の来館者の皆さん、今日は。一ヶ月ぶりです。4月下旬から開かれていた第25回全国菓子大博覧会は、事故もなく無事に終わりましたね。入場者も当初の予想をはるかにうわまわる93万人をかぞえたそうです。テーマ館となった本館の前には、連日たくさんの人の列ができました。皆さんの印象はどうでしたか、よい思い出ができたでしょうか。
博覧会といえば、何といっても1970年に大阪・千里で開かれた日本国際博覧会、通称大阪万博を思い出します。3月から半年にわたって開催されたこの博覧会を訪れた人は6400万人、日本の人口の半分が来場したことになります。もちろんたくさんの人が期間中に何回も訪れたので、厳密には日本人の2人に1人は来場したということにはなりませんがね。日本ではじめての大規模な国際博覧会だったし、「月の石」をはじめ評判の高かった出品がたくさんあったので、老若男女を問わず、たくさんの人びとにいろいろな思い出をこの博覧会はもたらしたと言えるでしょう。
このような博覧会にかぎらず、わたしたちは日々の暮らしや人生のさまざまな体験、社会的な体験や私的な体験のかずかず、を思い出としています。思い出というのは、やはり月日の経過とともに記憶は薄れてゆきます。その意味では、思い出を楽しむというのは案外むずかしいことのようです。ここに博物館のもう一つの大きな役割があります。
5月末から本館では、今年の夏に開催される全国高校野球選手権大会第90回大会を記念して「特別展 夏・甲子園」を開催します。毎年の夏に全国の人びとの目を集める甲子園球場は、この春からリニューアルで一段と風格のある球場になりました。兵庫県の代表校も毎年すばらしい活躍をみせてくれます。こうした甲子園球場や兵庫県の代表校の活躍とともに、夏の高校野球の90年の歴史を振り返る展覧会です。
この展覧会にはもちろんいろいろな記念すべき品が展示されますが、それらの品を観てもらうだけが博物館の役割ではありません。それらの品々は、皆さんの‘記憶’を呼び起こす力を持っているのです。博物館ではものを観るだけではなく、そのものが呼び起こす‘記憶’を楽しむことができるのです。「特別展 夏・甲子園」では、きっといろんな年代の方がそれぞれに‘記憶’を楽しんでいただけると思います。どうぞお楽しみに。