学校長挨拶2025年4月1日
兵庫県立長田高等学校のホームページをご覧いただき、誠にありがとうございます。
本校は、大正10年(1921年)に兵庫県立神戸第三中学校として創立され、以来「神撫教育」を理念に掲げ105年目を迎えました。これまでに多くの優秀な人材を世に輩出し、卒業生は経済、学芸、政治など各界で広く活躍されています。生徒たちは、自由闊達な校風のもと各自が主体性を遺憾なく発揮し、勉学、学校行事、部活動等へ全力投球に加え、様々な科学・文化コンテストや海外短期留学に積極的に参加するなど、自分の個性・才能を試し伸ばすべく、充実した高校生活を送っています。
1 神撫(しんぶ)教育
初代校長近藤英也先生が掲げられた3つの教育方針
- (一)「智・徳・体」の調和・統一した全人教育
- (二)一芸一才つまり個性を伸ばす教育
- (三)自己教育力を養う教育
を受け継ぎ、文武両道の公立高校として躍動し、地域社会から信頼される学校をめざします。
2 スクール・ミッション
自他を尊重する豊かな人間性とともに、創造的な探究力と多様な個性を活かす包括的な指導力を備え、主体的に未来を切り拓く、高い志を持ったグローバルリーダーを育成します。
3 スーパーサイエンスハイスクール(SSH)」(文部科学省指定)
理数教育を核とした文理融合の探究活動に取り組み、VUCA時代において主体的に自らを進化させられる人材育成をめざして、科学的思考力・情報発信力・問題解決能力等を高める学習活動を一層推進します。
先行きが不透明で将来の予測が困難といわれる時代にあって、在りたい未来づくりに挑戦できる高校であり続けるために、創立時から続く全人教育と新たな価値を創造する探究活動を両輪とし、今年度も“長田高校らしい”教育活動に取り組んで参ります。温かいご支援とご協力を賜りますようお願い申し上げます。
兵庫県立長田高等学校
校長 藤 原 生 也
1学期始業式式辞2025年4月8日
皆さん、おはようございます。学校までの坂道を登り切り、校門の桜が咲いているのを見ると、いよいよ新しい1年が始まると感じます。さて、まずは、2年生、3年生への進級おめでとう。
皆さんがこうして一堂に会するこの光景を見て、私自身も新たな気持ちでこの一年を歩みたいと、気持ちを引き締めています。
始まりというのは、不思議な力を持っています。「今年こそ頑張るぞ!」「新しい自分になる!」そんな気持ちが自然と湧いてくるのは、皆さんが成長しようとしている証です。また、2年生には2年生の、3年生には3年生の目標があって、こちらも去年の目標より現実味を帯びてきたのではないでしょうか。これも成長の証です。親から「成長しない」と叱られることがあるかもしれませんが、成長していますよ、みんな。
さて、昨年度は校内外でよく活躍してくれ、校長としてとても嬉しく思いました。77回生の進学結果も素晴らしく、皆さんが目標にできる結果でした。今日は、勉強や部活動で、高い目標を持って頑張っている、頑張ろうとしている78・79回生の皆さんに、オリンピック4大会に出場し、メダルを何個も獲得し、大活躍された体操競技選手、内村航平さんの講演を1年半ほど前に聞きました。そのときのテーマは「夢を叶えるために大切なこと」でした。
この講演では、最初に「夢を叶えるために大切なこと」として、内村選手は「シンプルに言うと、“死ぬほど頑張ること”」と話されました。最初はスポーツ根性論かなと思って聞き始めましたが、 講演を聴くと、“死ぬほど頑張ること”とは練習量や闇雲な努力ではなく、理念や信念に基づいての行動や考え方であることが分かりました。勿論、内村選手はスポーツ分野のトップレベルの人物ですが、皆さんも分野や功績の大小は異なっても、将来、国内や世界の様々な場で最前線で働き、活躍する人物になって欲しいと思っています。私がメモしていたことから何点か伝えますので、自分にとって必要なことだと思ったら、覚えて帰ってください。
- (1) 好きと言うことが最も大切。没頭力を発揮する。
- (2) 圧倒的努力=ただの「努力」じゃない 「圧倒的な努力」、「普通のことを普通以上にやる」これが、「圧倒的努力」
- (3) そもそも努力とは何か?努力とは「やるべきことをやること」
- (4) 基礎という面白くないことを、当たり前のように続けると、「当たり前」のレベルが上がり、難しいことができている。
- (5) 壁は必ずある。ネガティブな部分から乗り越えるには思考が大切。
「チリも積もれば山となる」とよく言うが・・・これは「チリは風で飛んでいく。このチリをかき集めて理解して「山」にするということ」これが思考するということ。
- (6) 同じく壁を乗り越える思考。「出来ないではなく、どうやったら出来るか」この壁をどうやったら越えられるかを考える。
最後に
- (7) 期待するな!自分のやるべきことに没頭する!
これらは、スポーツに限らず、勉強や文化活動にも言えることだと思います。今年も皆さんに大きな期待をしています。それぞれが、それぞれの挑戦をしてくれることをお願いして、1学期の始業式講話とします。
80回生入学式式辞2025年4月8日
爽やかな春風と希望に満ちた穏やかな陽射し、ここ神撫台は正に春爛漫の今日の佳き日、兵庫県立長田高等学校第80回入学式を挙行できますことは、この上ない慶びであります。
この晴れの席にご臨席いただきました、PTA会長様、同窓会神撫会理事長様、そして保護者・ご家族の皆様に対し、高い所からではございますが、厚く御礼申し上げます。
ただ今、入学を許可しました320名の新入生の皆さん、入学おめでとうございます。
俳人高浜虚子が詠んだこの句のように、新入生の皆さんは、これからの高校生活に大きな夢と希望を抱き、強い意志を持って校門をくぐられたことと思います。入学試験という試練を乗り越え、晴れて長田高校に入学されたことに対し、敬意を表するとともに、皆さんが本校の仲間に加わったことを、在校生、職員一同、心より歓迎します。
本校は大正10年4月にその前身である県立第三神戸中学校が開校して以来、脈々と受け継がれてきた神撫教育と、自由闊達な校風の元に長い歴史を重ね、本年度、創立105年となります。これまでに多くの優秀な人材を世界へ排出し、卒業生は経済、学芸、政治など、各界で広く活躍されています。新入生の皆さんには、この輝かしい歴史と伝統ある長田高校に入学したことを誇りに思い、今日の感激を忘れないでください。そして、長田高校の伝統を継承、発展させ、自分が長田高校の新たな歴史を築き上げていくのだという気概を持ってくれることを強く希望します。
さて、先ほど触れた本校教育の根幹である神撫教育は、神戸第三中学校の初代校長 近藤英也先生 が、本校の地名「神撫台」になぞらえて「神撫教育」として示された教育指針です。先日皆さんにお配りした「開門の章」という冊子に収められており、そこに書かれていることは
- 一つ、「智・徳・体」のいずれにも偏らず、これを調和統一して発達を目指すこと。
- 二つ、どのような人にも恵まれた一芸一才がある。個性を見いだし、個性を伸ばすこと。
- 三つ、「学ぶ」ことによって人間としてのあり方を自分で考えること。
この三点に要約することができます。この三つの教えに共通するのは「長田高校でどのように学ぶか」ということです。
長田高校は最先端の学びや新しい挑戦の機会に満ちています。まず授業はハイレベルです。積極的にかつ課題意識を持って参加し、万全な基礎学力を身につけることに努めましょう。単に問題を解くことに力を費やすのではなく、その背後にある概念や原理を理解しようとする姿勢が深い学びにつながります。すべての教科・科目の授業を通して身に付いた知識や技能、感性や体力は、皆さんの思考力や判断力、表現力や行動力のベースとなります。次に、文部科学省から指定を受けた「スーパーサイエンスハイスクール」として取り組む探究活動では、世の中で起こっている事象や、身の周りの自然や科学現象など、様々なことに関心や疑問を持つことが重要です。分からないことを「調べる」学習から、「解決策を見いだす」「新しい価値を発見する」など、一歩も二歩も踏み込んだ研究活動が高校生の探究です。自らの意志で進める探究活動は、科学的思考力や問題解決能力、創造性を育み、将来への大きな財産となることでしょう。授業や探究活動以外でも、講演会や研修会、学校行事や部活動などは、あなたの将来を方向付けるきっかけとなったり、リーダーシップや親友との出会いなど、人間的な成長を得る大きなチャンスと捉えましょう。他校では味わうことのできない、生徒が主体となった学校行事や部活動も楽しみにしておいてください。
アインシュタインは「学べば学ぶほど、自分がどれだけ無知であるかを思い知らされる。自分の無知に気づけば気づくほど、より一層学びたくなる」と言っています。「もっと知りたい!」「もっと学びたい!」自分から進んで学びに取り組み、真の理解を追求する姿勢を大切にして、学ぶことの真の楽しさを味わい、実感する三年間にしてください。本校での真の学びへのお誘いをもって、歓迎の言葉としたいと思います。
最後になりましたが、保護者の皆様に一言ご挨拶申し上げます。本日はお子様のご入学おめでとうございます。心からお祝い申し上げます。高校の三年間は、人生の方向を決定する大切な時期であり、その一方で悩みや苦しみが大きい時期でもあります。私達教職員は、お子様が、自らの生きる道を、自らの力で切り拓いていけるよう、全力でサポートに当たって参ります。どうか、本校の教育方針に深いご理解とご協力、そしてご信頼を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
それでは新入生の皆さん、ここには、ともに高みを目指す仲間が集まりました。時には自分の力にふがいなさを感じ、悩むこともあるでしょう。しかし、自分と他者を比較して落ち込んだり、自分を卑下する必要はありません。人にはそれぞれ個性があり、歩むスピードも違うからこそ開花する才能も異なるのです。この素晴らしい環境に自分が在ることの喜びを常に自覚し、そして、素晴らしい仲間とともに、学習に、探究に、部活動に、思う存分持てる力を発揮してください。皆さんにとって本校での生活が意義深い青春の三年間になることを祈念して式辞とします。
兵庫県立長田高等学校
校長 藤 原 生 也
創立記念日に寄せて2025年4月15日
明日4月16日は本校の創立記念日にあたります。明日は本校で長きにわたって行われてきた全山縦走が行われます。本日は創立記念日の前日ですが、私から本校創立の一端を振り返り、この歴史と伝統を通して思うことをお話しします。「創立記念日」とは学校の原点の日ですから、初心を思い出す意味でも意義深いものだと思います。
本校は大正9年に設立が認可され、翌年10年に開校した兵庫県立第三神戸中学校がその前身です。その頃、のちの神戸高校となる第一神戸中学校、そしてのちの兵庫高校となる第二神戸中学校が既に開校されていましたが、当時、中学校への志願者が多く、県民の要望を受ける形で第三神戸中学校が新設されることとなりました。その後、昭和23年に「兵庫県立長田高等学校」と改称し、昭和24年に高校1回生で男女共学となりました。今年は創立105年目に当たります。100周年の記念として同窓会の神撫会から寄贈されたのが、100周年記念会館の「アストラホール」です。
さて、大正9年4月16日に新校舎のもとで開校式と入学式が行われました。第三神戸中学校の場所は、現在地と同じです。初代校長は近藤英也先生。近藤先生は大正10年から昭和11年までの15年あまり校長を務められました。
当時は男子校でしたので、開校式の日に近藤先生は「本校の教育方針は、立派な人格を有する紳士たらんとするものを養成するにあって、単に、上級学校入学の準備をして能事おわれりとするものではない」と宣言されたと伝えられています。現代に直すと「本校の教育方針は、品格や良識を備えた立派な人格者を養成することであって、大学へ進学するためだけのために勉強することが、君たちのなすべきことの全てではない」ということでしょう。
その10年後、創立10周年記念式典の日に、近藤先生は「開門の章」で神撫教育の教育理念を示されました。神撫教育は本校教育の根幹であり、今日まで本校の教職員、生徒によって受け継がれてきました。その教育理念の3本の柱を皆さんは言えますか。
- 1つは、「智・徳・体」の調和的発達を目指すこと
- 2つ目は、一芸一才、つまりそれぞれの生徒が己の個性を見いだし個性を伸ばすこと
- 3つ目は、学ぶことによって「人間としてどう生きるか」を自分で考える、すなわち自己教育力を養うこと
と記されています。
「温故知新」という言葉があります。「温故知新」の意味は「昔の物事を研究し吟味して、そこから新しい知識や見解を得ること」と広辞苑にあります。現在は様々なことが大きく変動している時代です。皆さんにはAI時代、グローバル時代に必要となる新しい知識やスキルを身につけていくことが当然必要となりますが、このような時代だからこそ、これからの時代に通用する才能や個性は、豊かな人間性の上に築かれることで、社会に有用な人物として認められる所となるでしょう。長田高校で学ぶ皆さんはこの「神撫教育」の教えを「温故知新」の観点で理解し、本校での様々な活動や行事に意義を見いだし、人として成長してほしいと思います。
明日は六甲全山縦走が予定されています。古い資料には「大正11年4月17日創立記念登山、摩耶山に登る」と記録にありました。開校当時から創立記念日に登山を行うという歴史があったのですね。苦しい場面もありますが、クラスの仲間と一緒に歩けば、後には必ず楽しい思い出として残ります。頑張ってください。
本日は、本校105回目の創立記念日を迎えるにあたり、生徒の皆さんに本校の歴史の一端を知ってもらい、本校生としての誇りを持って欲しいと願い、お話しました。このような長田高校の生徒であることに自信を持ち、これまでの伝統の意義を大切にし、自由闊達な校風を、これから後に続く後輩に引き継いでほしいと願っています。そして、長田高校でこれからの時代に必要となる新しい学びにも積極的に取り組み、新しい長田高校の伝統を創って欲しいとも思っています。
以上で、創立記念日に寄せた講話とします。