学校長挨拶

学校長挨拶2024年4月4日

兵庫県立長田高等学校のホームページをご覧いただき,誠にありがとうございます。また,日頃より本校の教育にご理解とご協力をいただきありがとうございます。

本校は大正10年4月に,その前身である県立第三神戸中学校が開校して以来,自由闊達な校風のもとに長い歴史を重ね,本年度,創立104年を迎えます。その間,近藤英也初代校長が「神撫(しんぶ)教育」として掲げられた3つの教育方針
 (一)「智・徳・体」の調和・統一した全人教育
 (二)一芸一才つまり個性を重んじる教育
 (三)自己教育力を養う教育
は教職員・生徒に脈々と受け継がれ,これまでに多くの優秀な人材を世に輩出し,卒業生は経済,学芸,政治など各界で広く活躍されています。また,自主的・自律的な活動の成果により,文武両道の公立高校として地域社会からも信頼され,県下はもとより全国的にも「兵庫県に長田高校あり」と評されるところとなっています。

さて,社会は,グローバル化や情報化のめざましい進展により,様々な新しい価値の創造が期待される反面,地球規模の課題が顕在化し “予測困難な時代”,“先行きが見通せないVUCA時代”と呼ばれます。この新しい時代に活躍できる,高い志を持ったグローバルリーダーの育成を図るため,本校は,前述した「神撫教育」の理念のもと,
「自他を尊重する豊かな人間性とともに,創造的な探究力と多様な個性を活かす包括的な指導力を備え,主体的に未来を切り拓き,国際社会で活躍できる人材の育成」
をスクール・ミッションに掲げています。文部科学省から指定を受けた「スーパーサイエンスハイスクール(SSH)」(令和4年度より)を柱として,理数系教育に軸足を置きながら,「人文・数理探究類型」を中心に,全校生徒を対象とした文理融合の探究活動に取り組み,生徒の科学的思考力・情報発信力・問題解決能力等を一層高める学習活動を推進してまいります。この成果にもご期待ください。

伝統ある「神撫教育」を大切に実践しながら,常に時代の最先端を見つめ,長田高校らしい教育活動に取り組み,教職員一同力を合わせて本校生徒の成長を図ってまいります。温かいご支援とご協力を賜りますようお願い申し上げます。

兵庫県立長田高等学校
校長 藤 原 生 也

1学期始業式式辞 2024年4月8日

1学期の始業式にあたって,皆さんへの激励として話をします。

今年度は今がちょうど桜の花も満開となりました。「さあやるぞ」と気合がはいる反面,春季休業もあっと言う間に終わってしまった感じで,今日から新学年が始まり,新学年となってどことなく緊張しているのではないでしょうか。

まずは,2年生,3年生への進級おめでとう。

皆さんは,高校に入学してから勉強や部活動,学校行事や探究活動などに加えて,自分の趣味や習い事,人によっては学習塾での勉強など,大変忙しくしてきたと思います。順調な人もいれば,中には頑張っているはずなのに,思うように行っていない人もいるでしょう。

そこで,忙しい毎日を送っている皆さんに,iPS細胞の研究でノーベル賞を受賞された山中伸弥先が,当時30歳すぎで,アメリカの研究所で研究に没頭されていたころに,研究所の所長が研究所に在籍するポスドク(ポストドクター)20人程度を集めて語られた言葉で,心に残っているという言葉を,著書を引用して紹介します。

「研究者として成功する秘訣はVWだ。VWさえ実行すれば,君たちは必ず成功する。研究者にとってだけでなく人生にとっても大切なのはVWだ。VWは魔法の言葉だ」
VWのVは,Vision(ビジョン)のVです。ビジョンとは長期的な目標といいかえてもいいかもしれません。VWのWはWork hardのW。つまりハードワーク,一生懸命働くということです。
山中先生は
「研究者として,また人間として成功するにはビジョンとハードワークが必要で,どちらが欠けても ダメだというのです。 日本人はハードワークが得意です。夜遅くまで働く人,土日も働く人が日本には大勢います。しかし,いつのまにか目的を見失い,なんのために働いているのかわからない状態に陥ってしまう。ぼく自身にもそういう自覚があったので,メーリー先生のVWの教えが心に響きました。」
とコメントされています。
※「山中伸弥先生に,人生とiPS細胞について聞いてみた(講談社)」より

この一学期もとても忙しいと思います。例えば運動部の人は,大会を迎えます。文化祭もすぐそこです。もちろん,その間も授業は待ってくれません。

『一年の計は元旦にあり』と言われて,正月に様々な計画をたてるように,学校では,始業式の今日は1年の始まりです。皆さんは最近,「将来なりたい姿」「実現したい未来」を考えましたか。忙しい毎日だからこそビジョンを失わないことが大切です。1学期の始業日に当たって,ビジョンを再度思い起こす,または,じっくり考えてみてはどうでしょう。

最後に,3年生に一言。いよいよ最終学年です。この1学期は多忙であるけれど,とても重要な学期です。ぜひ,やるべきことを「やり切りましょう」。部活動や文化祭など,全力でやり切った人は,夏以降に成績が伸びる人が多かった。もちろん引退後の素早い切り替えと全力投球が伸びる条件です。どう行動するか,何を優先するかは自分で決めて,責任をもって実行してください。後悔はしないように。

さあ,今日から新入生を迎えます。先輩として大いにリードしてやってください。

以上,始業式のあいさつとします。

79回生入学式式辞 2024年4月8日

吹く風は春の香りを運び,校門の桜もまさに満開となった今日の佳き日,兵庫県立長田高等学校第79回入学式を挙行できますことは,この上ない慶びであります。
この晴れの席にご臨席いただきました,PTA会長 爲國 司 様,同窓会神撫会理事長 玉田 俊郎 様,そして保護者・ご家族の皆様に対し,高い所からではございますが,厚く御礼申し上げます。

ただ今,入学を許可いたしました320名の新入生の皆さん,入学おめでとうございます。晴れて兵庫県立長田高等学校に入学されたことを心よりお祝いするとともに,皆さんが本校の仲間に加わったことを,在校生,職員一同,心より歓迎します。

本校は大正10年4月にその前身である県立第三神戸中学校が開校して以来,脈々と受け継がれてきた神撫教育と,自由闊達な校風の元に長い歴史を重ね,本年度,創立104年となります。地域社会からも信頼され,県下のみならず,全国的にも「兵庫県に長田高校あり」と評されるところとなり,これまでに多くの優秀な人材を世界へ排出し,卒業生は経済,学芸,政治など,各界で広く活躍されています。
新入生の皆さんには,このような輝かしい歴史と伝統ある長田高校に入学したことを誇りに思い,本日の感激を忘れないでいただきたい。しかし,決して奢ることなく,多くの立派な先輩方に続くよう,常に向上心を持ち,学びを怠らず,一人一人が有意義な学校生活を送ることで,さらに長田高校の伝統を継承,発展させてほしいと願っています。

さて,高校入試も終わり高校生になられた今,一度,じっくりとここ数年間の社会に目を向けてみてください。グローバル化,情報化が進む中,新型コロナウイルスのパンデミックに始まり,世界各地で国際紛争が勃発,国内外での地震や異常気象による災害が多発するなど,多くの人命が危機に晒され,平和な暮らしが脅かされる状況に私たちは向き合っています。一方で,ロボット技術や生成AIの飛躍的な進歩,人類の宇宙への進出,SDGsの提唱による自然や環境,人権や教育の格差を置き去りにしない持続可能な社会体制の提案など,様々な新しい価値の創造も期待されます。
このように,今までの常識を全てくつがえしてしまうような,新しい技術やサービスが次々と生まれ,人間が過去の経験を頼りに対処することができない事態が次々と起こる現代社会では,ある出来事や課題に対して「これが答えだ」という1つの正解を導き出せるケースが稀になってきています。皆さんは,この「正解が一つには定まらない」という,予測が困難で先行きが見通せない時代を,これから生きていくことになります。
では,この時代に身につけておくべき力とは何でしょう。まずは,これから始まる長田高校の授業で学ぶ基礎学力です。すべての教科・科目の内容が皆さんの思考力や判断力のベースを作ります。その上で,重要となるのが,社会や科学など様々なことに関心を持ち,そこに疑問や課題を発見し,それに対して,仲間と力を合わせて答えを導き出したり,新しい価値を創り出していくという力です。これを「創造的探究力」と呼ぶことにします。本校では,文部科学省から指定された「スーパーサイエンスハイスクール」の取組を柱として,「人文・数理探究類型」を中心に,全校生徒が文理融合の探究活動に取り組んでいます。皆さんは本校での3年間をとおして,科学的・論理的思考力や様々な実験・調査・分析などに必要なスキル,情報発信力など,国内外の若者たちに負けない「創造的探究力」を身につけて大学等の次のステージに進んでもらいたいと思っています。探究は皆さんの「知りたい!」から始まります。ぜひ「探究」を楽しんでください。
皆さんの入学にあたり,本校への入学にかけたその努力を讃えるとともに,探究活動へのお誘いをもって,これを歓迎の言葉としたいと思います。

最後になりましたが,保護者の皆様に一言ご挨拶申し上げます。本日はお子様のご入学本当におめでとうございます。心からお祝い申し上げます。高校の三年間は,人生の方向を決定する大事な時期であり,その一方で悩みや苦しみが大きい時期でもあります。私達教職員は,お子様が,自らの生きる道を,自らの力で切り拓いていけるよう,全力でサポートに当たって参りますが,お子様の健全な成長を願い,豊かな個性を育てていくためには,学校と家庭がそれぞれの役割を果たしながらも,相互に補完し合い,連携を密にしていくことが重要であると存じます。どうか,本校の教育方針に深いご理解とご協力,そしてご信頼を賜りますよう,よろしくお願い申し上げます。

それでは新入生の皆さん,ここには,ともに高みを目指す仲間が集まりました。時には自分の力にふがいなさを感じ,悩むこともあるでしょう。しかし,自分と他者を比較して落ち込んだり,自分を卑下するのではなく,自分の強さも弱さも受け入れながら,この素晴らしい環境に自分が在ることを喜びとしてください。そして,自分の可能性を信じて,学習に,探究に,部活動に,思う存分持てる力を発揮してください。皆さんにとって本校での生活が意義深い青春の三年間になることを祈念して式辞とします。

令和6年4月8日
兵庫県立長田高等学校
校長 藤原 生也

1学期終業式式辞 2024年7月19日

連日「暑さ指数」が28以上の「厳重警戒」予測が発令されていますが,みなさんは元気で過ごしていますか。明日からの夏休みが皆さんにとっての「夏本番」でしょう。この1学期はどうだったでしょうか。
1学期の様々な行事は,コロナの頃の制約がなくなり,皆さんの協力で六甲全山縦走,文化祭,生徒会長選挙,校内大会,芸術鑑賞会,コーラス大会と実施することができました。特に1年生にとっては,日々の高速スピードの授業,レベルアップした部活動,そして生徒中心で進んでいく学校行事など,とにかく忙しく毎日が過ぎ,気がついたら1学期が終わっていたという人も多いと思います。1学期の始業式では,2,3年生には,忙しい長田高校生に山中伸弥先生の言葉を借りて「VWが大切」と話しました。「ハードワークだけでは成功しない,ビジョンを持ちましょう」と。ビジョンとして「将来なりたい姿」「実現したい未来」を考える事ができたでしょうか。
今日は3つのことを話したいと思います。

(1)4月から皆さんを見ていて「素晴らしい」と感じたことを2つ伝えます。
1つめ。長田高生は場に応じた行動ができる。具体的には,今日の集会の皆さんの態度がそれにあたります。集会や講演会の意味が理解できているから,スッと静かになり話し手に集中している。
2つめ。楽しみ方を知っている。例えば文化講演会での参加態度。演じ手が登場するとスッと静かになり,盛り上がるところは演じ手と一緒に盛り上がっていました。また,コーラス大会では,自分たちが真剣に取り組んでいる分,他のクラスをリスペクトし,真剣に聴き入っていました。
人の話を聞く・観る時の姿勢はとても重要で,賛同するのも批判するのも,まず聞いて・観て,理解し評価する事が大切なのです。それができる皆さんには,今後も高いレベルでの理解力と思考力を期待します。
ちょっと褒めすぎかもしれません。校長は先生方とは違った距離感がありますから,自分の学校の生徒の良いところがよく目につく職業なのです。
今,「自分はそうなのかな?」と考えた人はいますか。その人はメタ認知ができています。自分自身を客観的に認知する能力を「メタ認知」と言います。メタ認知の「メタ」は直訳すると「高次の(高い次元)」という意味がある。自分が認知(理解・判断)していること,例えば記憶・思考・学習したことなどを高次の視点から認知をすること,という意味です。イメージして下さい。自分が何かをしているときややり終えた時に,常にもう一人の自分が斜め上から冷静に見ているような状態です。自分の言動について,もう一人の自分が客観的な立場から,その言動を把握したりコントロールする能力を「メタ認知能力」と言います。自分をメタ認知して,「ここがあかんな」と評価できる人は,さらに高みへ改善できる人です。

(2)学校行事では,変わらぬ長田生の行動力や調整力を見せて貰いましたが,私が初めて参加する行事として,2,3年生のコーラス大会は特筆ものでした。「世界のオザワ」として皆さんもよく知っているオーケストラ指揮者の小澤征爾さんは,ある対談でハーモニーについて次のように語っておられたのを思い出しました。それは,音楽の深さはピタッとハーモニーが合ったときのゾクッとする感じである,チューニングが大切でいい加減なままだと音程もハーモニーも全て上手くいかないと。
4月当初から校長室には歌声がよく聞こえていました。ある時期からクラス合唱の練習になり,だんだん上手になっていくのを毎日聞いてきたこともあって,聞いていて感動しました。「人生100年時代の社会人基礎力(経済産業省)」に上げられた3つの力の中の1つに「チームで働く力(多様な人々とともに,目標に向けて協力する力)」が示されています。正に皆さんは,歌の好き嫌いや得意不得意を乗り越えて,クラスの協働でチューニングして私を「ゾクッ」とさせてくれました。点数を付けるのに必死であまり楽しめなかったのが残念でした。ちなみに,私が付けた上位3クラスの順位は,結果とは全て違うクラスでした。私の音楽を聴く耳がおかしかったというよりは,全クラスがハイレベルで実力が均衡していたということだと思って,結果に納得して帰りました。入賞した以外のクラスもとても素晴らしかったです。3年生全員によるラストの校歌合唱は,スマホに録画録音して,車の中で聞きながら帰りました。

(3)皆さんに,夏休みで心がけて欲しい2つのことをお願いします。
① 自他の命を大切にしよう
この夏も,生命を脅かすほどの暑さが予想されます。また,自然災害や交通事故など,予想できないことが起こります。自分の身は自分で守る。主体的な防衛行動をとりなさい。自分に対して,無理や我慢は時に必要ですが,無理・我慢のしすぎは不要です。
また,他人に対しては「思いやり」を。歩道を歩いているときや,電車の中など,目に見える行動ではなくても,他人や周囲に思いやりをもって優しい行動をして下さい。
② いろいろな事に関心を持って
先日大型スーパーで買い物をしているときに,シャツについていた札が目に止まりました。この札には「珪藻土からヒントを得た速乾インナー」とありました。シャツの生地一つとっても「へー」と思いました。万有引力の法則を発見したニュートンは「価値ある発見の要因とは,才能ではない。忍耐強く注意を払う力である」と言っています。身の回りには面白いことがたくさん転がっているので「へー」と思う体験をたくさんして下さい。
また,アメリカ,フランス,ウクライナ,中東など,外国での政治や紛争に関する情報にも目を向けるべきです。「自分のグローバル化」に普段から取り組んでみてください。

では,9月2日の2学期始業式に皆さんの充実した顔を見ることを期待して,終業式の式辞とします。